パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ42)

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肋骨骨折　4　(潤) ページ42

智Side

病院で溜まっていた書類の整理をしていた僕に、翔から連絡が入った。
すぐに検査ができるように準備しておいてくれって。

救急車を呼ぼうかと言ったけど、呼吸は落ち着いてきたし潤が嫌がるから自分が運ぶと言って電話は切れた。

それから数十分後。

「あぁ…」

X線の画像を見つめながら、無意識にそんな声が漏れる。

ふとチラッと隣を見ると、翔は腕を組みながら険しい表情で検査結果に視線を集中させていた。
きっと今、僕が話しかけても声は届かない。

組んでいた腕を解いて画像に手を伸ばし、指で肺の縁をなぞっているのは、きっとその部分が気になるからなんだろう。

手を顎に移動させて、唇に指を触れながらブツブツと呟いている横顔は、鍛えあげられた外科医の姿だ。

「潤が胸を強打した」「肺に損傷があるかもしれない」

そう電話で言っていたときも、絶えず潤を励ます声をかけ続けていたから。
早く楽にしてあげたいって気持ちが強いんだと思う。

医者であれば当たり前のことかもしれないけど、体調が悪いのを知っていて外出を許可したのは翔だから。
その責任なんかも感じてるんじゃないかな。

だからこそ、まずは正確な診断から。
画像を見る目は僕なんかよりも優れているからね。

翔「まぁ…様子見かなぁ…」

智「入院？」

翔「俺はそのほうがいいと思う…」

ようやく周りにも聞こえるしっかりとした声で話した翔に、そばで寝ていた潤がピクリと反応する。

なかなか画像から目を離さない翔に、潤は不安を感じているだろうね。
そう思って顔に視線を向けてみたら、やはり長いまつげを揺らしながら目を潤ませていた。

目だけで必死に訴えてくるのは、きっと身体を思うように動かせないから。
すごく痛いと思うよ。だって…

翔「ここ見て。線が入ってるでしょ？骨折れてるの。わかる？」

潤が何を言いたいのかわかっているお兄ちゃんは、早くも説得開始。

僕には骨折以外の異常は見当たらなかったけど、翔は出血や気胸を気にしていたから。
もしかしたらまだ、その可能性がないとは言い切れないのかもしれない。

翔「なんだよ～、そんな泣きそうな顔すんなよ～。
入院イヤなの？」

潤「だって…」

翔「うん…まぁ俺だって入院は嫌いだし、潤の気持ちはわかるけどさ。
でもまだ胸も痛むだろ？
家にいるより、病院のほうが早く痛みをとってあげられるから」

本当は有無をいわさず入院させたいと思っているはず。
家でできる事って、限られちゃうから。