夏の思い出 13 ページ37
翔Side
なんだか最近、涙もろくなった気がする。
年をとったせいか…。うん、そうなんだろうな。
智「何いってんの〜。昔からでしょ?」
指で目をなぞりながらボソッと言ったら、そう笑われてしまった。
智「ちょっと顔上げて?
僕もね〜人のこと言えないんだけどね〜」
俺の涙で濡れた目元をティッシュで拭きながら、自身も泣き虫だと宣言する家の主。
でも、だからって頼りないなんてことは全くなくて。
むしろ彼には、尊敬と信頼しかない。
翔「ごめっ…。も、落ち着いた」
智「ふふ、別に隠さなくてもよかったのに。
うちはみんな泣き虫なんだから」
こんな事で泣くなんて恥ずかしいと涙を止めようとしていたこと、気づかれていたのか。
「もっと泣く?」って冗談言って俺をいじってくる智にぃは、きっと俺を元気づけようとしてくれているんだろうな。
翔「もう泣かないよ。
さっきは、その…。体調悪いときは、余計に涙もろくなるっていうか…」
智「わかるよ。僕もだもん。
ちょっとした事でジワッとくるよね」
翔「うん、そう」
似たもの同士、共感する所も多い。
でもさっきの智にぃの言葉は…
それは俺、素直に頷けないよ。
翔「ありがとうってさ…。
俺、そんなこと言ってもらえるほどのことはしてないから。
俺は俺の役目を果たしただけだし、それに、結局こうして智にぃに心配かけたわけだし…」
智「でも翔がいなかったら、バーベキューは出来なかったよ。
大変な仕事を引き受けてくれたこと、感謝してる。
翔のおかげで、みんな楽しめたんだよ」
ほら、やっぱりだ。そう言うと思ってた。
智にぃは絶対に俺のことを悪く言わない。
誰のせいでもなく自分のせいで体調を崩したのに。
なのに、無理をさせてしまったと自身を責めることすらしかねない。そんな人。
翔「なんでそうやって、いつも泣かせるようなことを言うんだよ…」
智「ん?泣く?タオル持ってこようか?」
翔「ちょっと…人が感動してるところで…(笑)」
すごい勢いでニヤニヤしながら顔を覗きこまれたもんだから、泣くどころじゃなくなった。
吹き出した俺を見て、「んふふ」って優しい顔で笑っちゃってさ。
ほんと、あなたには敵わないよ。
智「ちょっと暗いけど、ここでもいいかな。横になって?」
翔「え、待って…急に?」
いい雰囲気だったのに、忘れた頃にやってくる智医師。
「診とかないと僕が心配なんだもん」なんてしょんぼり言われたら…
もう俺、嫌だなんて言えないよ。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
