パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ17)

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ガラガラ声　5　(和) ページ17

智Side

智「急にそんなことを聞いてくるなんて、誰か検査をして欲しい人がいるの?」

和「んん…。で、検査出来る?」

智「僕のクリニックの設備で出来ることならね」

和「ん、わかった…」

和の患者さんかもしれないし、友達かもしれないし、知り合いかもしれない…

僕の質問に対する答えは曖昧で本当のことはわからないけど、和がそれ以上話そうとしなかったから、この日は深く追求することはやめておいた。

気になってはいたけど、和がわざわざ自分から聞いてきたこと。
近いうちに話の進展もあるだろう。そう思ってた。

でも、それ以降和からその話が出ることはなくて。
「あぁそうだったのか」とようやく腑に落ちたのは、一週間も経った頃だった。

翔「なぁ、さすがにおかしくない?
検査しておこうよ。な?」

和「なんともないって。翔にぃの耳がおかしいんじゃん」

夕食後のまったりした時間、翔と和の大きな声が響く。

今日の和はなんだかイライラしているようで、意識的になのかは分からないけど貧乏揺すりまでしている。

翔「俺の耳がおかしいかどうかは、他の人に聞けばわかることだよ。
聞いてみな? 『俺の声、いつもと同じか』って」

和「もー。やだよ!! めんどくさい!!」

翔「はぁ…ったく…。
わかったよ。ごめんね、おっきい声出して」

これ以上の刺激は興奮させるだけだと思ったんだろう。

落ち着いた声に戻して背を向ける和の肩にポンと手を置いた翔に、毛を逆立てていたワンコはシュンとして小さくなってしまった。

やり過ぎたって思いがあるのかな。
本心とは別の言葉が出てしまったことに、自分自身が一番驚いているのかもしれない。

だとすると、和に負担をかけているそれなりの理由があるわけだけど…

智「もしも、和が勇気を出して話してくれるなら。僕らは全力で和の助けになるよ。
そろそろ我慢も限界じゃない?」

普段はイライラを表に出さない子なんだから、こうなっている頃にはだいぶ我慢をした後。
それは今までの経験でわかってる。

翔「本当は、和もわかってた? それが不安だったの?」

背を向けたままの和の目の前に回りこんで、顔を傾けながらしゃがんだ翔に、ずっと下を向いていた和の頭がわずかに動いた。

声がおかしいことは本人が一番良くわかっていただろうね。

和「しょ、にぃ…」

か弱いのに縋るような声。
これが、僕らの言葉を肯定した証。

あの時話していた『検査をして欲しい人』っていうのは、和自身だったんだね。