パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ16)

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ガラガラ声　4　(和) ページ16

智Side

夏風邪を引いてなかなか体調が戻らなかった和も、4日もすればほとんどの症状は快方に向かっていた。

唯一咳だけはいまだに鬱陶しそうにしてるけど、強い痛みがあるわけじゃないからそれほど気にはしていないみたい。

ただ、心配なのが一つだけ…

智「かず、アイス食べる? チョコとバニラ、どっちがいい?」

和「俺ねぇ…バニラ～」

智「はーい。すぐに持っていくね」

うん、やっぱりまだ声が枯れてるね。

数日前から普段の声との違いに気づいて気にしてはいたけど、特に治療をすることもなく様子を見てたんだ。

咳のし過ぎが原因かなって思うけど、本人に聞き取りをしてもはっきりとした答えが返ってこないから…

どんなふうにおかしいかとか、詰まる感じがあるかとか、いくつか質問をしてもはぐらかされるだけ。
困っちゃうよね。

智「はい、どうぞ」

和「ん…」

智「たまには贅沢するのもいいね」

和「うん…そ、だね…」

たまにしか買うことのない少しお高いカップアイスを手に、ソファを背もたれにして床の上に座っている和の横に腰を下ろす。

敏感な子だからね。
僕のしようとしていることがわかっちゃったみたい。

あぐらをかいていた脚は胸の前で抱えられ、大好きなはずのアイスはスプーンで表面を突っつくだけで食べようとしない。

室温と手の熱で溶け始めちゃってるよ。

智「食べないの? ほら」

カップの端の柔らかくなったところをスプーンでグルっとすくって口元に差し出してみたら、小さく口を開けてくれたから舌の上にアイスを置いてあげた。

和「あ…うまい…」

智「ふふ、でしょ～?
今日はこれ食べたら布団に入って、朝までゆっくり休もっか。
まだ病み上がりだからね」

本当はアイスを食べながら、もう一度喉の様子を聞いてみようと思ってたんだけど。

でも和がそれを恐れているような感じだったから。

何を隠しているのか知らないけど、今すぐ聞き出さなければいけないほど差し迫った状態でもないし、明日まで待っても問題はないよね。

和「ねぇ…智にぃ…」

智「うん? チョコも食べたい?」

和「え? …いや、違くって…あのね…」

せっかく体調が良くなってきたんだ。
今無理をさせる必要はない。

そう思っていたんだけど。

不安そうな声で、和は小さく話しだした。

和「智にぃさ…。
…内視鏡ならなんでも出来る?」

智「ん? 内視鏡?」

てっきり喉のことを話すのかと思ったのに。

この質問の意図は、何なんだろうね。