ガラガラ声 1 (和) ページ13
翔Side
「あひゃ、笑ってるー。かーわーいーいー」
「しー。起きちゃうだろ」
ソファーの前にしゃがみこんで、スヤスヤと眠る可愛らしい顔を見つめる2人。
むにゃむにゃ言いながら時折口角を上げ柔らかそうなほっぺたを緩めているのは、Aでも結心でもなく、歳に似合わず童顔な我が家の最年長だ。
そしてそんな兄に釘付けになっているのは、両手を頬に当てて破顔している三男。
……と、俺。
可愛いとか兄に向けた言葉として相応しくないのはわかってるけど、本当のことなのだからしょうがない。
俺が悪いんじゃないし。智にぃが悪いんだし。
そもそも俺は可愛いなんて一言も言ってないし。
隣にいるやつが何でもかんでも口に出すから、俺も危うくポロッと言ってしまいそうになるんじゃないか。
雅「寝言言ってるー。
あひゃひゃ、ズボン下げるよーだって。えっちぃね」
翔「バカっ、やましいことを考えるんじゃないよ。
仕事してる夢でも見てるんでしょ」
雅「お腹診てあげてるのかな。やだー、かーわーいーいー」
翔「お前さぁ…そのオカマみたいな声どうにかならないの?(笑)」
夕飯を食べてる時も眠そうだったから、かなり疲れているんだろうとは思っていたけど。
夢の中で診察をしているほどだもん、かなり仕事に追われているんだろうね。
雅「智にぃ、今患者さん多いのかな」
翔「熱中症やら夏風邪やらで内科も忙しいだろうね」
これだけ暑いと体調を崩しやすいから。
実際うちにも弱っているところをウイルスにやられてしまった子がいるくらいだ。
プール熱やヘルパンギーナなんかが流行るこの時期に小児科のエースが不在となると、フォローをする智にぃにはけっこうな負担がかかるだろうね。
潤「ただいま。あれ、智にぃ寝てんの?
あ、笑ってる…かわい…」
今の時間看病を担当してくれていた潤が、用が済んだようでリビングに戻ってきた。
翔「潤、声もれてる」
潤「え、俺なんか言ってた?
あ、和にぃの熱ね、まだ下がりきってなかったよ」
無意識のうちに可愛いと言わせてしまう長男…恐ろしい。
和の方はというと、昨日から続く熱にいまだ苦しめられているようだ。
智にぃが昨晩寝ずに看病してくれたんだけどね。
夏風邪はしつこいよ。
智「…ずぅ……ぁー」
雅「かずーだって。
あーんって、夢の中でもずっと和を診てくれてたのかな」
翔「ふはっ、そうかもな〜」
やけにニコニコしてると思ったら。
診察嫌いの和くんを泣かせないため、か(笑)
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
