森でカフェをやってる私は神です (ページ31)

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お客さんが29人ページ31

ゴリゴリゴリ……

固く冷たいそれを石でできたかき氷器で砕くのは一苦労である

私はただかき氷を作りたいだけなのだ

｢うーん…やっぱり鉄が欲しいわね

刃の部分だけでも変わると全然違うからなぁ…｣

とにかく今はお客さんにこれを出すのが先決だ

厨房を出て席に座る山本シナ先生の前にひとつのかき氷を置くと驚いた顔をしてこちらを見てきた。

｢まぁ食べてください…せっかくの貴重な氷がもったいないですよ｣

粉雪にも全く同じ味のかき氷をあげれば、彼女は素直に喜んでそれを美味しそうに食べていた。

その様子を見たシナ先生は恐る恐る木製のスプーンを持つとかき氷を一口食べた。

口の中に広がる冷たい氷と甘いシロップの味

それを飲み込めば内側から火照った体を冷やしてくれる

｢おい…しい……｣

当たり前だ

｢この氷を作ったのはあそこにいる雪女の粉雪です

優しくて繊細な粉雪にしかできない特別な力なんです

どうか全てを凍らせてしまう力を生まれつき持ってる彼女を否定しないでもらいたい…｣

シナ先生はハッとしたような表情を見せてきた

彼女はようやく気づいたのだ

苦しんでいるのは人間である自分だけではないということ

妖怪はどんなに自分が聞いていて辛い言葉を全て聞いてもなにも言わなかったことを

我慢して最後の最後に｢辛かった｣と言っただけでそれ以上は何も言わなかったことを

｢私…教育者として失格だわ…

こんなに優しい少女に辛い言葉を聞かせていたなんて…

粉雪さん、本当にごめんなさい｣

静かに自分がしでかしたことを深く反省し、1人の雪のように冷たい少女に向かって謝っていた。

そして彼女は優しすぎる

〈もういいんです…互いに望まないことをさせられて疲れているんですから今は休みましょう…〉

誰よりもまずは相手を優先させる優しすぎる子

私はそんな彼女を

彼女の仲間を救出しなければならないのだ。

お互いに穏やかな表情で笑い合う空間から1人離れて店を出ればいつの間にか夕焼け時になった空をじっと見つめた。

｢必ず助けに行く…だから待っててね

皆っ…!!｣