梶井さんと紅葉さんが駄弁るだけリターンズ〜暴走する檸檬と紅葉の協奏曲〜

ムコセイ、レットウセイ。 ページ8

此処はいつもの研究室。
梶井がヘッドフォンを付け、何やら鼻歌を歌っている。


「梶井、音漏れしておるぞ」


紅葉は梶井のヘッドフォンをもぎ取った。


「のわっ！？痛いですよう……てゆーか、このヘッドフォンが音漏れしない事は検証済みなんですがね」


「鼻歌が煩い」


「ふむ、鼻歌の事は考えていなかった！」


それはさておき、と紅葉は話を切り替える。


「そなた、一体何の曲を聞いておったのじゃ？」


「『アルカリレットウセイ』ですよ。貴女も聞きます？」


紅葉はヘッドフォンを耳に当ててみる。
どこか明るく悲しげでもある曲が聞こえてくる。


「……らしいと云えばらしいが……らしくないと云えばらしくない……」


「なんですそれ？(笑)」


くすりと笑った梶井は、そっと言葉を続ける。


「……でもまぁ、その曲、僕みたいでしょう」


「どういう意味じゃ？」


「僕の異能は、ともすれば無能力者に等しいものだ。こんなのがある意味なんて判らない」



梶井の口から溜息が漏れた。


「どんなに頑張ったって、宇宙大元帥の大切な人にはなれない。此の美しき紡錘形に殺されることは出来ない――この世界が如何に不都合かつ不条理であるかを再確認できる」


「そうか、そうじゃのう……じゃが、私は今のそなたも悪くないと思うぞ」


「ははは！そんなことを僕に云ってくれたのは、貴女が二番目だ！」



「一番目は？」


「宇宙大元帥に決まっている！だからこそ僕は、あのお方に仕えているんじゃぁないか！」

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