その名は『厄災』。【魔法使いの約束】 (ページ4)

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「賢者様は分からなかった？」

悪戯っ子の顔でこちらを見下ろすムル。ほんのりと甘い匂いに酔いそうになりながら、私はこくりと頷いた。
シャイロックは静かに私の分の飲み物を作ってくれている。

「知りたい？だよね、知らなくても良いことだってあるって言うけど、知らないものを知らずにはいられない！本能だから！」

「本能……」

「だから賢者様の目で確かめなくちゃ。楽しい冒険をしよう、賢者様！」

戸惑う私の前に、そっとソフトドリンクが差し出される。見上げて合った目が、『ご愁傷様』と囁いていた。

きらきらと宝石の目が輝きに覚める。差し出されると思った手は、悩むように顎に導かれていた。

「ど、どこへ行くつもりなんですか？」

「知りたい？それも知りたいよね？俺も知りたい！だから今から冒険してくる！」

「え、ええ……」

手が定める位置に迷う間に、ムルはそれを通り過ぎてちゃっちゃと外に出てしまった。
すれ違うようにシャイロックの楽しそうな声が響く。

「魅力的な出会いを経験したようですね、賢者様」

「ええと、はい。魅力的といえば、そうだと思います。」

「さぞ夜が似合うお方なのでしょう。居合わせることが出来ず残念です」

夜……。

そういえば、夜は好きかと尋ねられたことを思い出した。たしかに、夜と月の雰囲気が似合いそうな人だ。ムルみたいに研究でもしているのだろうか。
ムルもよく、昏い空が似合っている。