ミラクル ページ32
それから毎日智から
着信やメールが入る。
全て無視している
彼女が言っていたことは
ただの脅しかも知れないけど
私が働いている場所で待ち伏せするくらいだから
本当かも知れない。
智に迷惑をかけるわけにはいかない。
軽率な行動をして私が足を引っ張るわけにはいかない。
ありがたい事に仕事も忙しく
朝から晩まで仕事づくしだ
夜中にマンションについて
月明かりだけの部屋でぼんやり月を眺める
智の顔を思い出すと同時に
もう一人の懐かし顔を思い出す
そんな自分の愚かさに苦笑して
思いをかき消すように
部屋の灯りを付けてカーテンを閉める。
日本に戻らない方が良かったのかな...
「忙しいところ申し訳ないんだけど
来週、料理番組でフードコーディネーターの仕事が一件入ってて
現場に行って欲しいんだよ」
「部長...」
「いやいや
本当に申し訳ない
女子向けの番組らしくて
安心して任せられるの幸村さんしかいないんだよ」
「...了解です」
すまないね
なんて適当に労いの言葉を口にする部長を横目で睨みながらも
気分転換にいいかもと前向きの思考へと切り替えた。
でも
それが運命を動かす出来事へと繋がるなんて
その時私は思ってもみなかった。
収録日
店舗から電話がかかってきて
スタジオを離れて電話をし、
用件を済ませスタジオに戻ろうとした時
「あれ？
Aちゃん？」
その声は
「相葉くん...」
しまった
「Aちゃん日本に戻って来てたんだ?
全然知らなかったよー
リーダー知ってるの?」
「うん...」
「うっそぉー
後でリーダーになんで教えてくれなかったのか怒っておくよー」
「あはは
そうなんだ?
これから仕事なの?」
「そうなんだよ
年末番組のリハがこれからあってさ」
「...何時頃終わるの?」
さりげなく探る
「う〜んと
１７時過ぎになるかも」
「そっか
頑張ってね」
なんて適当に返事をして別れる
予定だとこっちの収録の方が早く終わる
収録が終わったら早くここから離れよう
智にバレたら
まずい
サクサク準備をして
終わり時間が遅れないように作業をした
この仕事を受けなければ良かった
今更そんな事を思っても仕方ない
とにかく
会わないように
迷惑かけないように
あれから彼女に見張られてるような気がする
誰にも相談できない
解決策は
ただ単に私が太陽の光に当たらなければ済む事
簡単な事だ
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作者名：ことら | 作成日時：2017年12月13日 14時
