1. ページ1
.
眩しい夏につかまえた
白くて細い手。
.
今でも目を瞑れば鮮明に思い出す。
セミの鳴き声と
授業開始のチャイムの音と
そして
君の声
それが俺の初恋だった。
.
.
.
「なぁ櫻井」
「はい？」
社食で後ろから先輩に話しかけられ
振り返ると
「お前、営業2課の滝沢と不仲説出てるけど
あれってマジなの？」
「…あぁ。またですか？」
ふぅっとため息をつく俺の肩に手をついて
先輩はニヤニヤしている。
「別に仲悪くはないですよ。
かと言って良くもないですけど」
「それって仲悪いって言うんじゃねぇの？」
「いや…」
どうでもいい質問に思わず失笑してしまう
「お前ら大学の同級生だろ？」
「そうですけど、それだけですよ？」
若干イラっとしながらも
相手は先輩だから、ないがしろには出来ず受け答えをする。
「ふーん」
「すみません。俺もう行かなきゃいけないんで。
失礼します」
そう言って営業スマイルのまま一礼をして
足早に社食を出る
マジうぜぇ。
内心イライラしながら喫煙室に入る
「おっ。しょーくんおつかれ」
「…大野さん…お疲れ様です」
そこにはうちの営業1課のエースで
一つ上の先輩、大野智がいた
今までの苛立ちがすぅっと抜けていくような
癒しの笑顔で迎えてくれる
「どしたの？
イラついてるね？」
この人はさすが長年エースだけあって
空気を読むのが抜群にうまい。
「いや…。
なんか、また滝沢と俺の不仲説が出てるらしくて。
課も違うから普段顔を合わせる事もないし
ましてや、入社8年も経てば同期会もほとんどないから接点も今更ないんですけどね？」
ははっと
眉をハの字にして笑いながらタバコに火をつける
「あれだね。
しょーくんもたっきーもイケメンで、しかも大学の同級生の同期だから目立つんだよ。
女子達が2人を並べて拝みたいだけだよ」
「はっ。
くだらねぇ」
タバコの煙を吐き出しながら
思わず本音が漏れる
「しょーくん
それ外に出さないでよ」
「当たり前です。
俺が営業スマイルを崩した事ありますか？」
じろりと大野さんを見つめると
「はいはい
外では爽やかで優しい完璧な男の櫻井翔さん」
ふにゃんと笑って大野さんはタバコの火を消す
「んじゃ
行きますか」
「はい
大野さん」
苛立ちと共に最後に煙を吐き出して
喫煙室を後にする
櫻井翔
30歳
何不自由なくここまでやってきた
あいつの事以外は
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 490人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ことら(プロフ) - 皆さまコメントありがとうございます。 (2018年11月3日 11時) (
レス) id: f90816f02b (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - はじめまして!毎回楽しく読ませて頂いてました！すごく面白かったです､これからも頑張ってください！ (2018年11月2日 19時) (レス) id: 41dfb4f50b (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - お疲れ様でした！ (2018年11月2日 18時) (レス) id: 57fa7283bf (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - しようちやんも大好きだよ (2018年10月22日 21時) (レス) id: 971a33d799 (このIDを非表示/違反報告)
ことら(プロフ) - まひうお様はじめまして。そう言っていただけるなんて光栄です。ありがとうございます！ (2018年10月22日 17時) (レス) id: f90816f02b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ことら | 作成日時：2018年10月13日 19時
