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彼女から放たれた質問は、俺には答えたくないものだった。彼女の言葉で、嫌にも気付いてしまう。
やはり、俺らの関係は もう過去のものなのだと。
分かっていたはずなのに、本人から目の前に突き出されるとやはり辛いものがある。
彼女は、俺の背中に手を回すこともなくかといって拒否をする訳でもなく。 ただただ俺に抱き締められながら、俺の返事を待っていた。
俺は、やっと止まってきた涙を拭って鼻を啜る。そっと彼女から離れて、きっと赤い目のままでかっこ悪いけれど じっと彼女の目を見て、真実を答える。
「 そうだよ 」
「 … 」
「 俺は お前の彼氏で、お前は 俺の彼女だった 」
「 … 」
「 隠してて、悪かったな 」
「 …ええよ、 」
現実を受け止めるように ゆっくりと目を閉じて、俺の言葉を反芻しているかのように 時折少し頷きながら 彼女はそこに立っていた。
何分そうしていたのだろうか、わからない。もしかしたら 1分も経っていないのかもしれないが、そっと彼女は目を開けて 淡々と俺に告げる。
「 帰る 」
「 えっ、あ、おう 」
「 じゃあね、志麻 」
「 いや待てって、送ってくわ 」
「 いや、いい 」
「 良くないやろ、お前その脚でどうやって帰るんだよ。結構遠いぞここから お前ん家 」
「 坂田に迎えに来てもらうからいい 」
「 それなら、それまではここにいて… 」
「 ええよ、もう遅いし 邪魔やろ 」
そう言って つかつかと玄関まで歩いていくAをどうやって 引き留めようかと、泣き腫らした後のぼうっとした頭で考える。
きっと、Aがここで帰ってしまったら 俺らの関係は今度こそこれで終わりだ。
もしかしたら、の希望も 無くなる。
だから、帰したくないし 帰しちゃいけないはずなのに、無理に引き止めるようなことも 何故か出来なくて。
ただ、さっきよりも遥かに遠くなってしまった彼女の背中を黙って見つめることしか出来ない。
「 今日はありがとう。散々振り回してごめん 」
靴を履いて立ち上がった彼女は、俺の方も見ずにそう言って ドアに手をかける。がちゃりという音と共に外からの冷たい風が中に吹き込んできて ほんの少し 思考がクリアになった気がして。
____あぁ、ほんまにこれで 最後だ
彼女の姿を見るのも、声を聞くのも。
なのに一歩外へ出た彼女に俺は、“ またな ” って そう声をかけていた。
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ざゆ(プロフ) - 本当に本当に本当に最高でしためちゃくちゃ泣きました!!こんなすてきなさくひんをありがとうございます、また何回も読みに来ると思います本当に大好きです!! (2020年8月11日 1時) (レス) id: d0019edafb (このIDを非表示/違反報告)
空っぽのコップ(プロフ) - センラさんに正直に話す所から涙が止まりませんでした。こんなにも素敵な作品を作って下さってありがとうございます! (2019年6月28日 7時) (携帯から) (レス) id: 7582f8fce2 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - ぷりん畑さん» お返事遅くなって申し訳ありません。私の作品なんかで涙を流してもらえるなんて光栄です!ぜひrecoupを聴きながらまたこの作品を呼んでもらえると嬉しいです! (2018年6月7日 3時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん畑 - お友の紹介で読み始めたんですが、夢主事故った位からずっとうぅうぅ泣きながら読んでました。またrecope聴きたくなりました。大好きです。 (2018年5月25日 22時) (レス) id: ddc5e690a1 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - 葵香さん» 素敵な曲ですよね、あの曲私大好きです(*´ω`*)ご覧いただきありがとうございました! (2018年1月18日 1時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
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