Remember Loving 【志麻】

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｢ なに言うてんねん、A!! まーしぃ やで!? 志麻くん!!! ｣


｢ ？ ｣






坂田が必死に俺を指差して、俺の名前を叫んでも、彼女は 誰それ？みたいな表情を崩さなかった。

俺はその光景を、笑いもせず泣きもせず、ただ ぼうっと見ていた。






｢ 冗談やめてや、俺が あほの坂田って名前で活動してて、それで 浦島坂田船ってのもやってて そのメンバーに志麻くんがいるって… あの、Aも知ってることやん… ｣


混乱しているのか、文脈も何もごちゃごちゃになりながらも、一生懸命説明する坂田。
それに対して、あーそんなことも言うてたね、なんて。









｢ ほんとに…覚えてねぇのか… ｣


｢ 志麻さん？だっけ？ごめんなさい、何度が会ったことあんのかもしれんけど… 私記憶力悪くて ｣


｢ ほんまに記憶力悪いみたいやな ｣


｢ んなっ!? むっちゃ失礼やなっ ｣


｢ うそうそ、ごめんな？いきなりそんなやつが来てもうて ｣


｢ や、心配してくれたんは嬉しいからいいけど。ちゃんと覚えとけるようにしとくわ ｣


｢ おう、そうしといてくれ ｣







じゃ、俺 帰るわ。邪魔したな〜、って 病室を出た。坂田の声が俺を呼んでたけど、無視。
今日、坂田の声無視しすぎてんな 俺。




そんなことより、俺… 出る時声 震えてたりしなかっただろうか。
アイツに対して、自然な受け答えは出来ていただろうか。
あんまり会ったことのない、知り合い程度の演技は…出来ていただろうか。









｢ …こんなことって…あんのかよっ…… ｣






坂田に色々説明されても思い出せなかった彼女が 次に俺に向けたのは、彼女が苦手な愛想笑いってやつで。

久々に見た その笑顔が、だいぶ心にきて。





目覚めたって 聞いて。
あんな大事故にあって、昨日の今日で目覚めて アイツやべぇなさすがやなって。
いつもあんま言わんけど、やっぱ俺 お前がおらんとアカンわ とでも言ってやろうかなって。

そう思ってたのに、全部狂った。









今日、俺は 大好きで大好きで堪らない 一生をかけて幸せにしようと誓った彼女を、失った。

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