Remember Loving 【志麻】

recoup 13 ページ13

.



明日も早いし、疲れるし。俺らは順番にシャワーに入ってすぐに寝た。
誰が泊まっても大丈夫なように、布団も何組か用意してあって坂田の寝る場所もちゃんと確保出来た。



二人して静かにもそもそと布団に入って、睡眠に逃げようとする。が、さっぱり寝付けなかった。


坂田は分からないが、俺は目をつぶれば彼女のことしか考えられなくて。
笑った顔、怒った顔、泣いた顔。次々に浮かんでは消えて…最後には、今日見た 眠っただけのようなあの綺麗な顔。



これから先、もうあの顔しか見られないかもしれない。もしかしたら、ただでさえ白いあの肌がもっと白くなって、消えてしまうかもしれない…





( …んなの、嫌に決まってんだろ )






俺の思い出の中だけじゃなくて、本物のあいつも消えないように。手を伸ばしてみるも、当たり前だが空を切るだけで。

すぐそこに聞こえるのは、坂田の一定の呼吸だけ。









｢ くっそ…寝れねぇ ｣


｢ ん？……… ｣




俺の呟きに、軽く反応を返した坂田だったが、寝ぼけ半分なのだろう。すぐにまた一定の呼吸へと逆戻り。

なんかすることねぇかな、と頭を巡らせていると ふと思い出す。





そういや、Aから留守電が届いていたはずだ。








近くで充電している携帯を引き寄せ、留守電の再生ボタンを押して耳に近付ける。そこから流れるのは、俺の大好きな人の声。






｢ あー…もしもし志麻？今あれか、飲み会中か。変な時に電話してごめんな。
いやー忘れんうちに感想言っておきたくて。直接やったら絶対言えへんし。

…とりあえず、ほんまお疲れ様。めっちゃ緊張してたの見てて伝わってきたわ(笑)
んでも、優しい人たちばっかで 良かったなほんま。めっちゃ紫振られてたやん。安心した

大人気なのは妬けるけど、私まで嬉しかった…今日の志麻、一段とかっこよかったよ。

……んじゃ、明日のライブも私ちゃんとあんたのこと見てるから。ライブ一段落したら、また家行くわ。ほなねー ｣





｢ っんやねん…これ… ｣






いつも。ライブ後に電話は来る。
けど、お疲れ様ーとかそんなもんで。

こんな感想とか全く言っていかへんし、
っつーか…妬けるとか言うてたよな？






｢ なんでこういう時に限って、こういうこと… ｣






俺が、退院後一発目で不安になってるってこと気付いて、電話してきたんやろうなって。
もし、俺がこの電話に出れてたら、また違う今があったのかなんて考えて、また俺は顔を顰めた。

recoup 14→←recoup 12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す