163.SOS ページ21
Side:mm
阿部ちゃんがいないリハ室は、
いつもより色がない。
彼がリハに参加し始めてから、
コンサートのリハにも力が入り、
俺たちの士気も一気に上がったような気がする。
今日はメイキングのカメラと、
雑誌の取材が入っていて、
俺たちはいつもより気を引き締めてリハに望むが、
やっぱり彼が居ないリハ室は少し寂しかった。
隙間の時間を見つけては阿部ちゃんに連絡せずにはいられなくて、
何度もラウールに「にやけてるよ」と注意を受ける。
ここ数ヶ月で
ラウールは見違えるほどに垢抜けた。
加入したとき、
人見知りで、大きな体を小さくしていた彼。
子供みたいにあどけなくて、
たどたどしくて、
俺が守ってやらないと、と思っていたのに、
気がつくと大人びていて、
俺よりもずっと賢くて、
華があって。
堂々とセンターに立つ姿をみて、
もう心配いらないな、と感じた。
リハが終わり、
着替えてからスマホを確認すると、
タイミングよく電話がかかってきた。
『阿部亮平』
その名前をみて、
慌てて電話を取る。
「もしもし、阿部ちゃん？」
全員が手を止めて振り返ったのがわかった。
自分自身も動揺している。
彼から電話がかかってくるはずがないのだ。
声が出せない彼との連絡手段は、
ずっとメールかグループチャットだった。
「どうしました？」
風を切る音だけが聞こえてくる。
何か情報を探した。
逆側の耳をふさいで、電話の向こうの音にだけ集中する。
息遣いが聞こえてきて、
阿部ちゃんが走っているのがわかった。
「…大丈夫？…じゃないよね。
Yesは一回、Noは二回、スマホの本体叩けますか」
かすかに、「カチッ」とスマホに爪が当たる音がする。
「俺、今リハ終わったのですぐに出られます。
少し待てますか。今病院？」
＿＿＿＿＿＿カチカチッ
「…家に向かってます？」
＿＿＿＿＿＿カチッ
風を切る音に混ざって、
別の何かの音が聞こえて、
俺は必死に耳を澄ます。
『…あべさん…です…の……か…』
それを聞いて全てを察した。
最悪だ。
この時間なので、病院から戻るところを狙われたか、
買い物などで家を出た際に狙われたか。
「阿部ちゃん、落ち着いて。
大丈夫です。そのまま巻けそうですか？」
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雪兎（阿部担）(プロフ) - 数年ぶりによんだんですけど、本当にこの話大好きで、何回読んでも泣いてしまう最高の作品です。ありがとうございました！！ (9月4日 21時) (
レス) @page38 id: 265bbda4f1 (このIDを非表示/違反報告)
ﾅﾂｷ - 他の方が書かれてるように読んでいくうちに物語に引き込まれて、止まらなくなりました。こんなに泣きながら小説を読んだのは初めてです。所々切なくて胸に刺さる部分もありましたが、最後mmabが結ばれて良かったです。素敵な作品をありがとうございました。 (2022年4月29日 23時) (レス) @page38 id: 2d51285911 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしゅう(プロフ) - 読み始めたら止まらなくて一気に読みました。途中ハッピーエンドになると書いてあったけど、切なすぎて胸が痛くなるのは止められず目が腫れるほど泣きました。skabが好きなのでskが切なかったけど、ノンフィクションじゃないかと思える感動な作品で、読めて幸せです。 (2021年3月25日 12時) (レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
あか - 涙が止まりませんでした(T_T) (2021年3月19日 21時) (レス) id: aad3573941 (このIDを非表示/違反報告)
yum(プロフ) - 今更ながら、読ませていただきました。もうなんだか感動しすぎて…笑一気に読んでしまいました笑これからも他の作品読ませていただきます！ (2020年7月15日 2時) (レス) id: a05dc0eb83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：haryu
| 作成日時：2020年6月15日 17時
