標的137 ページ44
どん、という衝撃と短い悲鳴。
我に返るよりも早く、咄嗟に腕を伸ばす。
「はひっ！大丈夫ですか！？」
「っごめん。よそ見してた……」
「ううん、私こそごめんね。ありがとうAくん」
曲がり角の向こうから現れたのは、同じくこの時代へ飛ばされてきた──京子とハルのふたりだった。
嫌な顔ひとつせず、にこりと笑みを返す京子。
反射的に彼女の手を取ったおかげで、どちらも怪我はない。
ほっとその手を緩めつつ、ふと問いかける。
「そういえば、ふたりはどこへ？」
見れば、それぞれの腕には──何やら大きな籠。
不思議そうに見つめる私に、ハルは元気よく髪先を揺らした。
「これから、お夕飯に使う野菜を採りに行くんです！」
「野菜？」
「ここ、地下に菜園があるんだよ」
すごいよね、と京子。
さらに聞けば、他にも図書室や大浴場などもあるらしい。
恐るべし、ボンゴレの財力。
「頑張ってるツナさんたちのために、ハルたちもできることをしようって。ね、京子ちゃん！」
「うん！お料理するのは楽しいし……それに」
明るいやり取りに、どこか癒されながら頷いていた時だった。
──一瞬、京子が僅かに目を伏せる。
「京子？」
「……え？あっ、えっと、なんでもない！」
その瞳を覗き込めば、彼女は驚いたようにぱっと顔を上げた。
気にしないで、と笑う表情に、もう先ほどの陰りはない。
思わず顔を見合わせる私とハルをよそに、京子はそれじゃあ、と籠を持ち直して言う。
「ハルちゃん、そろそろ行こっか。お野菜、たくさん必要だもんね」
「あっ……は、はい！ではまた……Aさんも修行、頑張ってください！」
「ああ、ありがとう。ふたりも無理しないで」
こちらを見返りながら去っていく京子とハル。
やがてその背中も見えなくなり、私は静かに手を下ろした。
…………いや〜、かわいいなあ。うん。
久しぶりの穏やかな会話を噛み締め、ひとり深く頷く。
私の周り、基本男所帯だし。
やっぱ女の子がいるとこう……あるよね、華が……
「……って危ない危ない。にやけすぎだ」
思わずそんな独り言ももらしつつ、慌てて周囲を見回す。
誰の気配もないことを確認し、私はほっと胸をなで下ろした。
それにしても……菜園か。
何かを育てるって、したことないなぁ……
……そういや、この後の予定はまだ決まってないんだよな。
ふとした思考とともに、ひとつ“あること”が浮かぶ。
思いつくや否や、私は少しの好奇心を胸に急いで駆け出した。
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オウリ(プロフ) - こまりさん» ありがとうございます~！近いうちに続編公開するのでお待ちください！ (6月14日 12時) (
レス) id: df42654abf (このIDを非表示/違反報告)
こまり - 凄く面白いです！続きが気になります…🤔 (6月14日 5時) (レス) id: fd7a7e37b1 (このIDを非表示/違反報告)
七粍(プロフ) - きーち1さん» お返事遅くなりました…！コメントありがとうございます^^*おかわりどうぞ！！！(笑) (2022年3月27日 21時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
きーち1(プロフ) - 展開、設定めちゃくちゃ好きです！！ご馳走様です！！続き早く読みたいです！！おかわりください！！！！！ (2022年2月28日 6時) (レス) id: a03c85b354 (このIDを非表示/違反報告)
微々(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます〜！！^^*私もサクサク更新できるように頑張ります…！ (2021年11月18日 11時) (レス) id: d69433a459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オウリ | 作成日時：2020年11月29日 23時
