111.『澱んだ不安を胸に』 ページ21
「お前なんなの？僕の安眠を返せまじで」
不機嫌そうに僕を見つめる両の瞳に、ただただ変わらないとしみじみ感じた。十年来続いている精神世界での逢瀬も―といっても僕が無理やり連れてきているのだが―今となっては日常の一部だ。
なんせ、僕の身体は今尚、復讐者の牢獄の中だ。僕の髪も伸びたが、彼女も外見的容姿が成長した。結わえていた髪を下ろしたせいもあって、かなり大人っぽい。
僕が軽く謝ると、Aは髪を毟るぞと脅してきた。パイナップルヘアーと罵られるのはもう恒例になったので、大分……いや、パイナップルヘアーでは無い、僕の髪は。
「クフフ……いやそれは困ります」
意外と髪ってデリケートなんですからね。沢田綱吉とずっと居たせいか、ツッコミ力が格段に上がっていた彼女を見ながら、心に残る不安をぶつける。
「その身体いつまで耐えれるんですか」
なるべく彼女を見ないようにして、尋ねる。何度も尋ねた言葉である。
「さあ。医者じゃないし」
呆れた瞳が此方を見ている。彼女の脳内はきっと死にたいしか無いだろう。どれだけ周りがそれを望んでいないと告げても、彼女はそれを汲み取ることはしない。今までも、これからも、そうであり続けるだろう。
彼女は徐に上半身を起こし、僕の頬へと手を伸ばした。温度なんて感じない筈なのに、酷く温かかった。
「別にいっつもいっつも死にたいと言っている僕の望みが叶うんだ。その時は祝福してくれるだろう？」
異論なんて言わせることのない問い。十年間という付き合いで、もう彼女が死を望む理由を知っている。何故そうなったかさえも。だからこそ、今脆い身体で、幾千と行う彼女の趣味を止めないなんてことは出来やしない。
死を前に彼女はなぜ穏やかでいられるのだろうか。
多分、僕にはきっと、いいや他人には彼女以外の誰にもこの気持ちがわかることはないのだろう。
「安心しろ、死ぬときはお前に一言言ってから逝ってやるわ」
穏やかな顔から、悪戯をした少年のような表情を浮かべて僕を見る。僕は一瞬、呆けてしまって、噴き出した。ああ、もう全く。
彼女が僕に触れている箇所に触れ、そして肩口にもたれ掛かった。此処に彼女は居る。居るのに、物凄く不安を感じる。
本当に、死んでしまうのではないか。
裏稼業では当たり前な事なのに、まるで沢田綱吉に感化されたようで尺だがどうしても考えずにはいられないのである。彼女の体温を感じながら、酷く弱気になっている自分を情けなく感じた。
112.『森で首吊り、そのまま遭遇』→←110.『相も変わらず、その中で』
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黒井蜜柑(プロフ) - 葵さん» ありがとうございます！更新停止が多くなるかもしれませんが、なるべく早く次の話を載せようと思います！ (2018年8月14日 21時) (
レス) id: 9eff08ca5a (このIDを非表示/違反報告)
葵 - めちゃくちゃ面白かったです( *・ω・)ノ更新楽しみにしてます!!! (2018年8月14日 18時) (レス) id: 742e9e233f (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - わっつあっぷふーさん» 失踪……！！？大丈夫です、失踪したら友人に殺されます(*' ')*, ,)...ｩﾝなるべく皆様に心配かけないように頑張ります！ (2017年12月8日 5時) (レス) id: 9eff08ca5a (このIDを非表示/違反報告)
わっつあっぷふー(プロフ) - 失踪じゃなくてよかったです(*´ー｀*)更新ゆっくりでいいですから失踪だけは… (2017年12月8日 0時) (レス) id: 4ec61bd823 (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - みこさん» なんと！！ありがとうございます！更新停止気味で申し訳ないです…！！ (2017年10月20日 23時) (レス) id: 9eff08ca5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒井蜜柑 | 作者ホームページ：http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時：2017年7月10日 20時
