薬局の窓 ページ25
病は気から。
とは良く言ったもんで。
病院という場所はなんだか待合室にいるだけで具合が悪くなる気がする。
「松本さーん。こちら処方箋です。お大事に」
事務的に薬の処方箋をもらって、すぐ向かいの薬局へ。表にはオレンジのゾウの人形。その後ろのウインドーにはタモリのユンケルのポスター。西向きだからか、かなり日焼けして色褪せている。
ガラガラ…
引き戸を開けると小さなカウンター。
奥にガラスばりの部屋。壁一面に薬品棚があり、中では白衣のなで肩の男がいつも忙しく薬を出したり入れたりしている。
カウンターにはいつも小柄な猫背の男が、なにやらパソコンに向かっていて、処方箋を受け取ると気だるそうに奥のガラスの部屋へそれを渡し、会計と薬を渡してくるのだが。
今日は猫背がいない。昼休みか？
仕方なく
M「すいませーん！」
少し声を張り上げて、奥のなで肩に向かって叫ぶ。
S「はーい！あれ？ニノは…あっすみません。」
M「お願いします。」
S「はい、お待ちくださいね〜」
いつも奥にいる時は、真剣な顔つきでとっつきにくいような印象だったのに、初めて近くで見ると丸い瞳のせいか、やけにオバサンみたいな口調のせいか可愛らしい印象だ。
しばらくカウンターの椅子に腰かけて、店内の薬のパンフレットやら、片隅のドリンク剤の冷蔵庫やらをぼんやり眺めて待っていると
S「ごめんね〜お待たせ〜ニノが…あっ受付の子なんだけど、この時間はお昼なの。でもさ〜ちょっと一声かけてって欲しいよねぇ」
ワサワサと薬の束を袋に入れながらボヤく。
なんか母ちゃんみてえだな。
ここしばらく、寝込んでいたので病人扱いされずに普通に話すのいつぶりかな？
M「いまの若い子はみんなそうでしょう。」
嬉しくてなんとなく返してみる。
S「…そうなのかな〜」
人さし指を唇にあてて首を傾げた後、バサバサと薬の束を広げる。
S「えーっと…数の確認を…あ、寝る前のお薬、減ったね。調子いい？」
M「はぁ」
S「良かったねぇ〜！」
ニッコリ笑った顔がおひさまみたいで。
なんかこっちもつられて笑ってしまいそう。
S「お会計が…あれ？レジ開かない…」
M「あの〜このボタン…」
S「わ！開いた！すいませんねぇ。お大事に！」
ニコニコと見送ってくれる笑顔は、どんな薬よりも俺を元気にしてくれる気がした。
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作者名：ゆみ
作成日時：2014年7月20日 14時
