16〜離れている ページ17
1か月は過ぎただろう。
彼女はもう俺の事を忘れているかもしれない。
けど、俺はまだ忘れられずにいた。
ちゃんと食べているのだろうか。
ちゃんとやっているのだろうか。
……俺がいなくなったことを気にかけてくれているのだろうか。
なんて淡い期待を抱いていた。
やめよう、彼女はしっかりしてるから。
きっと俺なんかが居なくてもちゃんとやってるよ。
困ったときだって、誰かが助けてくれるだろう。
容姿もいいし、人に好かれる。
だからきっと将来俺なんかよりもいい人を見つけて、幸せになるのだろう。
地球人の男が彼女と一緒に居る様子が目に浮かぶ。
もやもやして、いらいらして、すぐにかき消した。
もしも俺が普通の人間だったのなら。
もしも俺が地球で生まれていたのなら。
憎らしい父の顔、優しい母の顔、無邪気な妹の顔……一瞬浮かんだかと思えば消えていく。
思えばいつもそうだ。
愛したものは全て俺から離れていく。
いや、俺が離れているのか。
どれだけ足を動かしったって、どれだけ頭を使ったって彼女には近づけない。
近づいてはいけないんだ。
悔しい、とでも言いたげに拳を握りしめながら乱暴にベッドへ倒れこんだ。
嗚咽交じりの泣き声が自室に響いていた夜だった。
41人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まぷりる | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/maycry
作成日時:2017年5月28日 22時