其の三 ページ4
某食堂にて
中島敦はがつがつと茶漬けをかきこんでいた。其の前には太宰治と国木田独歩、隣には有馬A。
国木田「おい、太宰。早く仕事に戻るぞ」
『全くですよ。仕事中に「良い川だね」とか云って川に飛び込んだんですって?』
国木田「そんな莫迦がいるか、まったく!おかげで見ろ。予定が大幅に遅れてしまった」
ぶつぶつと二人がかりで太宰に説教をしつつ、国木田は太宰の眼前に手帳を突き出す。
太宰「国木田くんは予定表が好きだねぇ」
国木田「此れは予定表ではない!理想だ!我が人生の道標だ!そして此れには「仕事の相方が自_殺
太宰が面白くなさそうに呟けばがしゃん、と音を立てて国木田は立ち上がり堂々と口にする
『まぁまぁ。国木田さんも落ち着きましょう。太宰さんはもう救えませんから』
太宰「Aちゃん今すごい流れるように私に毒を吐かなかったかい?」
Aが宥めて国木田に着席を促せば大人しく国木田は椅子に座る
敦「ぬんむいえおむんぐむぐ?」
国木田「五月蠅い。出費計画の頁にも「俺の金で小僧が茶漬けをしこたま食う」とは書いていない」
敦「んむぐぬ?」
国木田「だから仕事だ!俺と太宰は軍警察の依頼で猛獣退治を――」
『如何やって会話してるんです?』
***
敦「はーー食った!もう茶漬けは十年は見たくない!」
国木田「お前…」
満足そうに腹を抑える敦とは裏腹に国木田は敦が空にした茶碗を見て青筋を立てる。
そんな国木田に気づいているのか気づいていないのか、敦は口を開く。
敦「いや、ほんっとーに助かりました!孤児院を追い出され横浜に出てきてから食べるものも寝るところもなく…あわや斃死かと。」
敦の言葉に太宰は顔を上げてまじまじと敦を見る。
太宰「ふうん、君施設の出かい」
敦「出…というか…追い出されたのです。なんでも経営不振とか事業縮小だとかで」
『へえ…其れは薄情な施設もあるものだね』
国木田「A。俺たちは恵まれぬ小僧に自費を垂れる篤志家じゃない。太宰、仕事に戻るぞ」
国木田が手帳をしまい、立ち上がって太宰を促せばふと気がついたように敦が口を開く。
敦「そう謂えばお三方はなんの仕事を?」
太宰「探偵だよ。」
敦「探偵…?」
『そう。でも探偵とは云っても猫探しや不貞調査じゃあない。』
国木田「切った張ったの荒事が領分だ。異能力者集団「武装探偵社」を知らんかね?」
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作者名:怜 | 作成日時:2023年11月2日 16時