其の三 ページ13
国木田「判っている――『独歩吟客』!」
国木田が手帳に万年筆を走らせ、頁を破り取ると其の頁が鉄線銃に変化する。国木田が引き金を引けば鉄線が現れ、男の手に巻き付く
男「ッ、しまっ――!」
太宰「確保っ!」
太宰が声を上げて、合図を送れば国木田が男を吹き飛ばす。
太宰「いいねぇ、一丁上がり!」
ぴょん、と顔を出した太宰は楽しそうに笑って敦たちの前に出て、敦によくやったというかのように親指を立ててむける。
敦「…は、はぁ…良かった…」
敦はその太宰の表情と行動に安心したように溜息を吐いた。
ふらつく躰を敦が起こせば、後方からどん、と何者かの手に押されて倒れ込む。
ピッ
敦「ぶっ」
倒れ込んだ敦の手元にあったのは、
爆弾の操作機
すると、爆弾の時計が動き出す
敦「うっ、うわああああああああああああ!?ば、ばっ、爆弾が!あ、あと五秒!?」
焦る敦。冷や汗がとめどなく流れて敦の思考は真っ白になる。そんな中、先刻の太宰の言葉が頭をよぎる
太宰『…爆弾に何かを被せて爆風を抑えるっていう手もあるけど…如何にもこの状況じゃ、ね』
敦「な、にか…被せるもの…!」
慌てて周りを見渡すが生憎被せそうでかつ、爆弾の衝撃を和らげそうなものは見当たらない。
敦「…ぁ…」
気がつけば敦は爆弾を抱え込むようにして蹲る
太宰「な!?」
国木田「辞めるんだ、離れろ小僧ッ!」
慌てた二人が声をかけるが、敦が離れる様子は見えない。
敦「(…僕、何…してるんだろう)」
嫌に冷静な思考で敦は考える。
騒がしいはずの室内の雑音が消えて、爆弾の計時機の数字が少なくなっていく音だけが耳を襲う。
ふと、隣を見れば人質の少女とAの顔が映る。
ピッ――
爆弾の計時機が最後の合図の音を鳴らす。
敦は抱え込む力を強めてギュッと目を瞑って、来る衝撃に備えるが
敦「…あ、れ…?」
いくら待っても来ない衝撃を不思議に思って目を開ければ、太宰、国木田、そして犯人の男が不安そうに敦の顔を覗き込んでいた
太宰「だいじょーぶ?敦くん。」
敦「…え?…ば、爆発は?ど、如何なって…?」
太宰「…谷崎くんも、敦くんも演技上手だねぇ」
太宰は犯人の男に話しかければ、男は照れくさそうに笑う
谷崎「い、いやぁ…」
そんな状態に目を白黒させる敦。
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作者名:怜 | 作成日時:2023年11月2日 16時