【完了】16話だと私は思ったのです。 ページ18
貴方side
｢おい…ッ！！！｣
ふと耳にかすれた声が届いた。
車の走る音と人が話す声に混じって聞こえた声は聞き覚えがあった。
「あ、狩屋くーん！」
声の主を探すと横断歩道の向こうに狩屋くんがいた。
街灯の光に照らされて汗が光っている。
こんなになるまで探してくれたのかと思うと胸の奥がじわりと温かくなった。
だが同時に冷や汗がたれる。
ここまで心配をかけて、完全に嫌われたのではないかと。
彼とは年は一つしか変わらないが少しでも良い先輩でいたい。
胸をはって「狩屋くんの先輩だ」と言いたい。
だから私はいつでも気丈でいなければならない。
「早く、帰りなよ。もう、夜遅いよ。」
「な、に言ってんだよ…ッ」
狩屋くんは不愉快そうに顔を歪めた。
私は何をしても彼の気に障るらしい。
視線を下に落とす。
私の顔なんて、見ないで。
醜く捻れた私の想いを知らずに帰って。
「はぁ、もう。いいです。今からそっち、行きますから。」
来ないで。
そう言おうとして顔を上げた、その時。
私は全神経を疑った。
だって、私の、私の体が、
＿＿宙に浮いているのだから。
鈍い音ともに全身に痛みが走る。
ズキズキと痛む頭を抑える手は赤く染まっていた。
思わず、ひっ、と声があがる。
だんだんと抜けていく力。重たくなる瞼。遠のく景色。意識。
その中でパタパタと寄ってくる狩屋くんが見えた。
まだ動く口と声帯を震わせる。
『ごめんね。大好きだったよ。ずっと。』
貴方の嫌いで、目障りな、先輩の言葉は届いてますか。
私はずっと、ずっと、生意気で可愛らしい後輩の貴方が好きでした。
ああ、でも、一つ。
私は何もないところで転けるほど、ドジじゃない。
【完了】17話だと私は思ったのです。→←【完了】15話だと私は思ったのです。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きんぐ(プロフ) - うたうさん» いえ笑。好きなものには節操なく、ですから笑 (2015年9月5日 13時) (
レス) id: 5cf3a6c2ac (このIDを非表示/違反報告)
うたう - サクサク進むなんて凄すぎです！！(゜ロ゜ノ)ノ (2015年9月5日 13時) (レス) id: 7c4a6d391b (このIDを非表示/違反報告)
きんぐ(プロフ) - うたうさん» コメントありがとうございます。思ったより書くのが楽しく、意外にサクサク進められています。これからもご愛読、お願いします！ (2015年9月5日 13時) (レス) id: 5cf3a6c2ac (このIDを非表示/違反報告)
うたう - 超面白い!!!((o(^∇^)o))これからも頑張ってくださいね( v^-゜)♪ (2015年9月5日 12時) (レス) id: 7c4a6d391b (このIDを非表示/違反報告)
きんぐ(プロフ) - 亜依斗(*・ω・)ノ☆AITOだお☆さん» コメント有難うございます！これからもちまちまとですが、更新していきます。 (2015年9月3日 22時) (レス) id: 5cf3a6c2ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きんぐ | 作成日時：2013年10月19日 12時
