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#序章 ページ1

「じゃあ僕は、ドラーチェ市長に騙されただけだって言うのか……?」

__ヴァニタス市、郊外。悪臭漂う石造りの建物の片隅に、一人の青年が腰を下ろしていた。
ろくに手入れもされていない、ボロボロの建物が立ち並ぶそこは、貧しい者や事情のある者が集う、俗に“スラム街”と呼ばれる場所であったが、例の青年は随分とその場に似つかわしく無い出で立ちをしていた。

薄い青の上品なシャツも、革でできた黒いベストも、一般人にはとても手が届かない高級品であろう。
陶器のような白い肌に、闇に溶けるような細い黒髪。そのどちらも乱れなく整えられ、美しいままだ。
姿勢良く座るその姿からは、青年の育ちの良さが伺える。

……ただし、その両眼は閉じられた瞼の裏で潰れ、両の腕を通す為の袖は肘上の部分で固く結ばれてはいるが。

「まあ、そういうことだ。説明してやっただろ? ベル・ドラーチェは市民の味方じゃ無い。素封家を始めとする市民たちを<捧物>(ホロコースト)にし、私欲を満たすために使い捨てている……悪徳市長だ」

青年__カイン・ローザベルトの正面には、人ならざる頭部を持つ大男が立っていた。ヴァニタス市では禁忌とされている存在、大悪魔である。

「そんな……市長は、僕が描いた絵をあんなに褒めてくれたのに……。それに、受賞を逃した僕に優しく声をかけてくれた!」
「その後あの無人駅に呼び出されて、俺と契約するよう唆されたんだろ?じゃあ実力あるアンタが賞を逃したのも全部ドラーチェの工作だ」

カインは痛む自らの眼を押さえようとして__やめた。動かすべき両腕が無いことを思い出したのだ。

「そうか。本当に、ドラーチェ市長が……嘘では無いんだな?」
「俺が嘘を吐く理由なんて無いだろ」
「……それもそうか。わかったよ、覚悟は決まった」

「……ところで。アンタはドラーチェに騙された後、俺に『僕ともう一度契約を結べ!』と叫んだな。その内容が気になったから、線路に放り込まれて電車に轢き殺されかけたアンタをわざわざ助けてやったんだ。さあ、アンタは一体この俺とどんな契約を結ぶつもりなんだ?」

ジズはカインの右頬にその大きな手を添え、カインの恐怖心を煽ろうとする。
カインはほんの少しだけ肩を震わして__意を決したように唇を開いた。



「僕は、復讐しなければならない。市民を騙し、素封家の人々を殺し……僕から絵と父を奪った。

__ベル・ドラーチェ市長に!」

*→



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檸檬@被ノエ募集企画主催(プロフ) - 泣いた女鬼。さん» ありがとうございます。また追加させていただきますね。 (2018年9月3日 14時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
泣いた女鬼。 - これで全部です。URLを手で打ち込んだので飛べなかったらごめんなさい (2018年9月2日 19時) (レス) id: b323fb397f (このIDを非表示/違反報告)
泣いた女鬼。 - http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Cloud/ (2018年9月2日 19時) (レス) id: b323fb397f (このIDを非表示/違反報告)
泣いた女鬼。 - http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Sleep/ (2018年9月2日 15時) (レス) id: 8a3d632f4e (このIDを非表示/違反報告)
檸檬@被ノエ募集企画主催(プロフ) - 泣いた女鬼。さん» 了解しました。全員完成されましたら追加させていただきます。 (2018年9月1日 19時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:檸檬 | 作成日時:2018年7月29日 11時

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