《番外編》菅原の考え ページ35
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｢片桐さんと同じクラスなの誰？｣
2日目、練習後に坂の下商店で肉まんを、と言う誘いを断ると、1日目同様、1人でササッと帰ってしまったA。彼女は部員との間に距離を置いている。
理由は何一つ分からない。聞かれることも、話すことも拒んでいる。
だから、まずは名前から暴いていこうと菅原は思ったのだ。自己紹介で明かされなかった彼女の名前。
向こうが関わりたくなくても、臨時で1週間とはいえバレー部の仲間なのだ。
距離を縮めるために、まずは名前から。名前呼びは嫌がるかもしれない。それでも、彼女との壁を無くしたかった。なぜここまで彼女にこだわるのか。理由は菅原自身にもわからなかった。
｢あ、俺です｣
軽く手を上げてこっちへやって来た縁下。そのまま、菅原に問う。
｢あの、どうかしましたか？｣
｢片桐さんの下の名前って何？｣
え？と驚いた声が縁下から出る。しかし、すぐに答えた。
｢えっと、確か……A、片桐Aです｣
Aさん、か…心の中で名前を繰り返す。
｢名前で呼んだら怒るかなぁ……｣
｢どうでしょう…。怒りはしないでしょうけど…。取りあえず驚かれると思います｣
｢そうか……よし！｣
どうかしましたか？、と顔にでている縁下は首を傾げた。
｢明日、片桐さんのことをAさんって呼んでみよう！｣
エ、と固い驚いた声が縁下の口からもれた。
なんだなんだ？と部員がわらわらと集まってきた。
｢明日1日片桐さんのことをAさんって呼んでみようと思って｣
｢スガ、何で片桐さんの名前を知っているんだ？｣
澤村が笑顔を少しひきつらせながら聞いた。全員、心底驚いている。
｢今さっき縁下に教えて貰った｣
｢そうなのか？｣
｢はい。菅原先輩が片桐さんと同じクラスなの誰？って聞いてきたので……｣
｢でも何で？｣
東峰も聞いてくる。
｢そんなの決まってるじゃないですか!!!｣
田中が言う。西谷も続けて、
｢Aと仲良くなりたいからですよ!!!｣
と言った。
｢早速名前で呼んでるし……｣
｢そういう奴らだろ｣
｢木下、止めようとしても無駄だぞ｣
｢1度やると決めたら歯止めが聞かないから｣
心配そうに言った木下は成田と縁下に説得された。
締めは、2人声を合わせて、
｢｢諦めろ｣｣
と、木下の肩に手をのせて言うのだった。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2021年7月29日 15時
