羽が21枚 ページ27
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ひとつの事に夢中になると、時間が早く感じる。おかげで、今日もあっという間に部活が終わった。
やはり、先生は挨拶のときしか来なかった。Aの事も何も言われなかったから、きっとこの部活の事など、どうでもいいと思っているのだろう。
今日も、Aは一言言ってから帰ろうかと思い、先に言っておこうと、澤村のもとへ行こうとしたが、菅原に声をかけられた。
「あっ、片桐さん、今から大地が坂の下商店で肉まん奢ってくれるけど、一緒にどう?」
『そうですか。お誘いいただきありがとうございます。ですが、結構です。お疲れ様でした。』
「あ、ああ……お疲れ…」
あっさり断られて、不思議そうな顔をしながら菅原はAに挨拶をする。
「あれ?片桐は?大地さんが肉まん奢ってくれるんすよね?」
「帰ったよ。お疲れ様だって」
「マジすか!?」
Aの耳に、田中と菅原のそんな会話が、体育館から聞こえてきた。
しかし、そんなことは彼女に関係なかった。彼女は一人、帰路に着く。
だから、その頃体育館内で、菅原先輩が考えたことを、1人で先に帰ったAが知るよしもなかった。
━◈━◈━◈━◈━◈━
約束は1週間。
休日の部活にも出た。初めは協力する気がなく、1日だけでいいか、と思っていたノートも、マネージャーさんが困るようなことをしたくなくて、結局しっかり書き込んだ。
そのうちAは楽しくなってきて、家に持ち帰ったりしたが。しかし、しっかり書いてよかったと思っていた。なぜなら、これで中途半端にバレーとサヨナラせずに済んだから。踏ん切りが着いたからこそ、後悔もない。
写真もたくさん撮ったし、写真だけじゃなくて、動画も撮った。もちろん、すべて百合に流すため。送信すると、それらをAはすぐに消してしまった。
それから、彼女が驚いたことがある。それは、わざわざ自己紹介のときに名字しか言わなかったのに、いつの間にか名前が割れて、名前呼びになっていたこと。きっと縁下が教えたのだろう。部員はもっと親しくしたくて名前呼びになったのかも知れないが、彼女からしたらありがた迷惑だ。
1週間は長いと、きっと、凄く長い時間に感じるのだろうと思っていた。けれど、予想は外れた。
Aが思ったよりも、1週間はあっという間だった。
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作者名:七瀬月華 | 作成日時:2021年7月29日 15時