羽が18枚 ページ24
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1人、寒い夜道を歩く。周りには誰もおらず、Aの足跡だけが響いていた。
今日1日を通して、改めて本当にバレーの何が面白いかわからなくなった、と感じたAは、まぁいいか、と、ははっと乾いた笑みをこぼした。どこか、諦めたような寂しげな声だった。
すると、突然暗い夜道にAの着信音が響く。某黄色のプリンセスの曲だ。歩きながら、ろくに相手も確認せずに電話に出た。
『はい、もしもし?』
「あ、もしもし?A?」
『なんだ、百合か』
声を聞き、相手を確認したAに、百合は電話越しに大きな声を出して叱る。Aはスマホを少し耳から離した。落ち着いてきた百合に、Aは用件を聞いた。
「あ、えっとねぇ〜…て言うか、今大丈夫?」
『大丈夫だよ、だから電話出てんじゃん。』
「それもそっか。いやぁ大したことじゃないんだけどね?」
『あ、そう?じゃあ切ってもいい?』
「え、いや、それは勘弁」
『冗談だよ』
半分は、と小声で付け足した。
「おい!今半分はっていったな!」
『あ、聞こえてた?』
「聞こえとったわ!もうバッチリ!」
『はいはい、ごめんって。それで?ご用件は?』
「あ、そうそう。ほら、どうだった?練習!」
『どうって…別に普通だよ』
それ以上のことは言えなかった。それでも、どこか楽しげな声をしていた。
「えぇ〜!イケメンは?イ、ケ、メ、ン!」
『私は百合のイケメンのボーダーラインを知らない』
「あっそうだ!写真、写真ある?」
『あるか馬鹿。あったら盗撮だよ』
「えぇ〜、頼むよ〜!お願い!明日、写真撮ってきて!一生のお願い!お願いします!」
『それ、この前も言ってなかったっけ?』
「あれ?そうだっけ?それよりも、ほんとお願い!今、土下座してるから!」
『知るか。電話越しに見えるわけないでしょ。まぁ……撮れそうだったらね。』
本当は、自分のスマホにバレーの写真なんて1枚も残したくなかった。しかし、叶えようとしてしまうほど、Aはお人好しなのだろう。
「ほんと!?やったぁ!!約束だからね!」
とてつもなく嬉しそうな百合。
『はいはい。後なんかある?』
「ううん、用はそのくらい」
『そう。それじゃあね。また明日』
「うん!バイバイ!また明日、学校でね!」
あんなに懇願されたら断れる自信がない。
百合の願いを叶えるために、写真を撮る方法は何か
と、思考を巡らせながら家へ向かった。
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作者名:七瀬月華 | 作成日時:2021年7月29日 15時