羽が13枚*東峰side ページ16
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ビックリした。
俺、東峰旭は驚いている。え、でも俺だけじゃなくない？
まさかあの田中と西谷が本当に臨時マネージャーを見つけるなんて……
昨日、いきなり体育館を飛び出していったときは何を考えてるのかわからなかったし、｢臨時マネージャーを見つけた｣なんて嘘だとしか思っていなかった。
きっと来ないって思ったんだけど……
本当に連れてきたんだから、すごいとしか言えない。彼女の自己紹介は、名前だけのシンプルなものだった。名前も名字だけ。誰も下の名前を聞かなかったから、口は出せなかったけど。仕事の先生に、と縁下にお願いしたけど、結構早く戻ってきた。
きっと優秀な子なんだろうな〜。
しかし、気になることがあった｡勿論、自己紹介で下の名前は言わなかったこともだけど、俺たちの顔を見ようともしない｡
それから、俺はつい周りの声を聞く癖があるが……そこで聞こえたのだ。自己紹介の後、誰がマネージャーの仕事を教えるか話し合う、ちょっと前。
絶対零度、という言葉がピッタリなほど冷たく凍る、固い、ありえないほど低い声が。思わず目を見張った。まばたきをして、彼女の方をみると、何事も無かったかのように平然としていた。
周りは誰一人として気づいていない。
ぼそり、と、耳に入っただけなのに、背筋が凍った。
『バカらしい。バレーなんか無くなっちゃえばいいのに』
と、怒りなどの負の感情をにじませた顔で。
怖い、怖い!!
ヤバイよ、
でもそんなこと言う勇気を持ち合わせていない俺は、心の奥底にそっとしまい込んだ。
こういうことは、聞かなかったことにするのが一番だ。うん、そうしよう。すまん、片桐さん。俺には口を出すなんてできないんだ。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2021年7月29日 15時
