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松田の眉間に皺が寄った
駄目か、と諦めかけた瞬間、松田が口を開いた
「…俺が異動届を出したのは仇を打つ為だ。」
『仇?』
「あぁ。俺の幼馴染が4年前に吹っ飛ばされてんだ。直前の通話で"仇を打ってくれ"って頼まれた。俺だって親友の仇は取りたい。じゃねぇと前に進めねぇ。
だから仇を打つ為に特殊犯係に何度も転属希望を出してるってのによォ…。」
そう言って、机に頭を伏せる
成程、爆弾事件を担当する係に転属希望を出してるのに強行犯係に配属されたのか… まぁ頭を冷やすために同じ一課のココになったんだろうが。
そういえば、私も同時期に1回吹っ飛んだんだっけか。居合わせた爆処の面子と色々あって何とか全員死なずに済んだが。
『なぁ、松田。別にお前の考えを否定する訳じゃないんだが、』
話してた、直後に吹っ飛んでるなら恐らく避難の声や爆発音も聞いたのかもしれない
『お前の親友は、そんな事本当に望んでるんだろうか?』
昼間あんなにも強気だったのに、今じゃその面影は何処にも無い
未だ伏せられた頭にそっと手を乗せた
バッと頭を上げて此方を物凄い形相で睨む松田。
「何しやがる。それにどういう事だよ。」
『どうもこうもない。そのままの意味だ。親友のその言葉は、軽いノリじゃなかったのか?もし、お前が律儀にソレを守って吹っ飛んじまったら、彼岸の親友にどんな顔させるつもりだ?
"自分の一言のせいで親友まで死んだ"
その事実が、のしかかるんじゃないのか?相手にも、相手の家族にも。』
「うるせぇ。俺がしたいからしてるんだ。それにアイツは吹っ飛んじまったが死んじゃいねぇ。勝手に殺すな。」
『おっと、それは悪かったな。
だがな、それなら尚更そんな重苦しく捉える必要はないんじゃないか?』
私ら警察だって万能じゃない。
犯人を捕まえられない時があるから、未だに未解決事件は無くならない
今の松田は初めて会った私でも分かるくらいピリピリしていて、余裕のない、自暴自棄に陥っている様にさえ見える
もう少し自分を大切に生きて欲しいものだ。
取り返しのつかない事が、起こる前に。
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『...寝たか。』
隈が出来にくい体質なのだろうが、寝不足と分かってしまった以上放って置けなかった
なぜこんなに世話を焼いているのだろう。
自分でも自分が分からなかった
『...あ、家聞き忘れた』
勝手に財布や携帯見る訳にもいかないし...布団貸すか。
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作者名:遥希 | 作成日時:2022年7月2日 17時