二十二羽目 ページ26
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太宰は走った、そこらじゅうから聞こえる悲鳴の嵐になど目もくれず、"それ"を探すために走っていた
"それ"について知らされたのは、書類仕事を面倒くさがりながらもなんとか終わらせようと足掻いていた時だった
受話器から聞こえてきたのはいつもより緊迫した様子で話す首領の声
それだけならまだ良い、問題はその後だ
首領から伝えられた言葉が問題なのだ
【 Qが脱走した 】
「クソっ、何処にいる……!」
元々Qがいた地下は勿論、様々な部屋を探した………だとすれば……!!
ゾンビのように捜索の邪魔をする部下を蹴飛ばしながら太宰はある場所を目指すことにした
隔離されている筈のあの場所へ______
*
*
*
「かぁーごめかごめ」
『かーごのなーかのとーりぃはー』
「『いついつ出やう』」
二つの声が重なるのは地下は地下でも、周りとは少し離れ隔離されたAの部屋
楽しそうに歌うAの歌い方はまだ拙く、夢野に教えて貰っているのが見て取れた
Aと夢野が手を繋ごうとしたその時
「Aに触るな!!」
『!、太宰!!』
「あーぁ、見つかっちゃった」
息を切らしながら地下に駆け込んできた太宰。
太宰の姿を見た瞬間瞳を輝かせたAを横目に夢野は何事も無かったかのように笑ってみせた
しかしAのその表情を見た夢野の顔が、一瞬歪に歪んだのを太宰は見逃さなかった
「お前のせいで私は走り回るハメになったんだ、大人しく戻ってもらうよ」
「やだ!僕まだAお姉さんと一緒に居たい!」
「このっ…!」
太宰が夢野の腕を乱暴に掴み引きずろうとしたその時、太宰の腕を掴む者がいた
「A…?」
『太宰、久作君が可哀想だよ……もう少しだけここに……』
「君は何も分かってない!!」
『!!?』
珍しく声を荒らげた太宰に驚き、Aはその手を離してしまった
静まり返る室内、ハッとした太宰の視界に映ったのは、瞳に大粒の涙を溜めたAの顔だった
幼子のようにポロポロと涙を零し泣き始めたAにかける言葉が見つからず、太宰は夢野を引っ張って足早にその場を後にした
「ふふっ、嫌われちゃったね、屹度」
「黙れ」
その日拷問部屋から響き続けていた悲鳴は、少年のような声だったそうな
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七巳流 - 太宰さぁー〜ーーーん (2022年7月10日 16時) (レス) @page34 id: 910d5180ae (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - Юрияさん» コメントありがとうございます!期待に答えられるように頑張ります! (2019年4月29日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
Юрия(プロフ) - とても面白いです!此れからも、更新楽しみにしてます!更新、頑張ってください! (2019年3月17日 23時) (レス) id: f4565d370d (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 山吹晋助さん» 態々返信して頂いてありがとうございます。面白いお話にすることが出来ず力不足で申し訳ないです……そう言って頂けて光栄です。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ウナさん» コメントありがとう御座います。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 18時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイ | 作成日時:2018年9月3日 23時