検索窓
今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:154,129 hit

二十一羽目 ページ25






熱も下がり、すっかり元気になったAはまたいつもの様に地下牢の中にいた




首元には包帯が巻かれ、その腕には見舞いの品の猫の縫いぐるみがあった




尾崎からの頼み(めいれい)により買い直された真新しい寝台に、何度も読み返され色褪せた小説。




空調完備である筈のこの部屋には冷たく、寂しげな空気が満ちていた




彼女の頭に浮かぶのは太宰の顔


太宰に対して恋心を抱いた訳では無い。それなのに、彼女は太宰以外のことが考えられなくなっていた




答えの出ない謎の感覚に陥ったAはそっと溜息を溶かした、その時。





「わぁぁ〜!ここ、暖かいね!!」

『!……誰?』





声をかけてきたのは不思議な容姿をした男の子だった。



鉄格子の隙間から此方に手を伸ばし、男の子は私に向かって笑いかけていた





「僕はQ!夢野久作!!お姉さんは?」

『A……有栖川A』

「よろしくね、Aお姉さん!!」






夢野から差し出された手を恐る恐るといった様子で握り、Aは『うん』と微笑を浮かべた
























「Aお姉さんはどうしてここに居るの?」

『私の異能力が危険だから……』





脳裏に蘇るのは、あの日劇場で見た記憶(あくむ)



悲しげに俯いたAを見た夢野は、その姿が自身に重なったのか指先の冷たくなったAの手を取った





「………僕とおんなじ」

『え……?』

「僕も、僕の異能力のせいでここに居るんだ…」





辛そうに、微かに体を震わせながら久作くんは話してくれた




何の慰めにもならないかもしれない……けど、こんなにも小さな男の子が辛そうにしているのはどうしても見ていられなかった




だから____________





「!……Aお姉さん…?」

『大丈夫、独りじゃないよ』





握られていた手を握り返し、久作くんの頭を撫でる



どうか、この思いが届きますように……





少女のささやかなる願い___________

二十二羽目→←二十羽目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (221 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
595人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

七巳流 - 太宰さぁー〜ーーーん (2022年7月10日 16時) (レス) @page34 id: 910d5180ae (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - Юрияさん» コメントありがとうございます!期待に答えられるように頑張ります! (2019年4月29日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
Юрия(プロフ) - とても面白いです!此れからも、更新楽しみにしてます!更新、頑張ってください! (2019年3月17日 23時) (レス) id: f4565d370d (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 山吹晋助さん» 態々返信して頂いてありがとうございます。面白いお話にすることが出来ず力不足で申し訳ないです……そう言って頂けて光栄です。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ウナさん» コメントありがとう御座います。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 18時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:レイ | 作成日時:2018年9月3日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。