37*手引き ページ38
「凛月に聞いたよ。
嫌な思いをしたようじゃな。」
向かい合う形で座り、頭を撫でてあげれば細めた目元からポロリと涙の粒が零れ落ちた。
それを拭ってあげれば、黒と青の我輩や凛月の宝物が滲んでいる。
『…私の事はいいんです。
人間は私利私欲な生き物で下位の物を乏すのが好きと知っているから。…ただ…』
「ただ？」
『凛月さまのことを言われて…私がそこに居なければ言われることはなかったから…』
自分が我輩達にとって如何に大切な存在か、をまだAは解っていない。
側に、隣にいて良いし、居て欲しいと思ってもAはきっと「居させてもらっている」と仰々しく我輩達吸血鬼を感じている。
「…凛月はそんなこと気にしておらぬ。
ただAの綺麗なところを侮辱されたことに怒りは感じているようじゃが…」
『…零さま…』
見つめあった瞳は我輩を見ていない。
我輩ではあるが昔の「俺」を見ていること、本当は気付いている。
…口に出さずとも小さな恋慕を抱かれていたことも、俺自身がAのことを心底可愛がっていたことも。
「しっかりせい。
おぬしが悲しい顔をしていると凛月や我輩まで悲しくなる。
何度でも言葉にしよう。我輩はAが大切じゃよ。他の人間がどう言おうとAは宝物じゃ」
『零さま…』
瞳は虚から抜け、小さくも輝きを取り戻す。
頬を撫でれば小さく笑い、猫のようにすり寄ってくるから愛しく感じる…
「人間は善も悪も持ち合わせている。
夢ﾉ先の子達は皆良い子で人間嫌いのAも心を開いておるようで我輩は嬉しく思う。
嫌いになってばかりでは行けぬ。」
『…はい。皆優しくて…学院は、楽しい。』
「我輩もAと通えて楽しいぞい。」
零れるほどの笑顔をいつか親しくなった友に見せれる日が来るとよい。
『…女の子は少し怖いけど…がんばります。
零さま、いつも側にいてくれてありがとうございます。』
夕飯の用意をしますね！立ち上がり笑顔を見せるAに釣られて笑う。
物音を聞き付けたのか凛月も廊下に顔を出しており、我輩と目が合うもつまらなそうにAを追って行く。
…人間嫌いを克服させてあげたいが、難しいものがあるのう。
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りっちー(プロフ) - 面白かったです！更新頑張って下さいね〜！ (2018年5月21日 20時) (携帯から) (
レス) id: ee27b93d84 (このIDを非表示/違反報告)
モカ(プロフ) - 夢小説好きなネコさん» 高２の後半、もうすぐ３年になる時期からのスタートなので俺様じゃありません。 (2017年8月2日 10時) (レス) id: efb045d001 (このIDを非表示/違反報告)
夢小説好きなネコ - 兄者って高2の時俺様だったような… (2017年8月2日 5時) (レス) id: fcd198aace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：モカ
| 作成日時：2017年7月29日 16時
