王子先輩のウソ。【白】

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Raul side.









俺があの子に気付いたのは、1年前の春。




いつものように女の子たちに囲まれて両手いっぱいのプレゼントを抱えていると、その子が目に入った。

手提げがあるのに特に渡すこともなく、少し背中を丸めて階段を登っていく姿が印象的で。





いつもいるのに何もアクションを起こさない子だって気になってた。

人集りに怯えて、小動物みたいで可愛いなって。









いつ渡してくれるんだろう。

名前はなんて言うんだろう。




学年は、

クラスは、





毎日見掛けるのに、全く接点もないまま半年が過ぎた頃。


今までの非じゃないくらいの量のプレゼントや手紙に少しうんざりして姉ちゃんに迎えにきてもらおうと思って電話したんだ。








王子キャラを忘れて素で話していた時、なんとなく後ろが気になって振り返ったら、そこには人集りに怯えていたあの子がいて。


驚いて言葉に詰まったことを、今でも覚えている。







正直、俺の素顔を見られたのは誤算だった。


だから取り繕いたくて、彼氏のフリをしてポイントを稼ごうとした。








だけど一緒にいて、素のままでいられることが楽で楽しくなってきて。

これからも一緒にいられたら、そんな淡い気持ちを抱くようになった。






それなのに、そう思ったのは俺だけだったみたいで。

ウソの関係なんだからと言った彼女に勝手に苦しくなった。



そう提案したのは俺なのに。






彼女とどう接したらいいかわからなくなって距離を取って。

離れれば何か道が開けるんじゃないかって思ったけど、考えれば考えるほどわからなくなっていったんだ。







これが彼女への好意だと気付いたのは、それから少し経ってからだった。




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