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追ワレテ、隠レテ ページ33

×××


「こんな少女が、刃の届く瞬間まで殺気もないとは......」


油断をしていた。
咄嗟に距離を取り、喉笛を切り裂かれる事は何とか免れたが、フィッツジェラルドは泉の恐ろしさに、冷や汗が一筋流れた。
間合いを詰めるギリギリまで、一切の殺気を感じさせない。彼女の暗殺者としての技術は、幼い見た目に合わず桁外れだ。

泉は小刀を仕舞い、フィッツジェラルドに背を向ける。
気を失い、グッタリとしたまま動かない中島の腕を掴んだ。彼女は手摺に足を掛け、中島諸共勢いよく手摺の真下にある海に身を投げる。


ドンッ......


丁度其処に、クルージングを終えたばかりの小型船が通り掛かった。鉄橋の真下を通る船の上に、泉は着地をすると、中島を寝かせる。

最初から、彼女はフィッツジェラルドと争う気は無かった様だ。
中島を取り返す隙を作る為に、自ら飛び込んだけだった。


「おや 逃げられたか」


二人の姿が遠下がる。それでも彼は冷静で、上着の内側から紙の束を取り出す。バインダーに綴じられた、まるで一冊の本並みに分厚い紙の束には、何百本と云う作戦計画(プラン)が書かれていた。
其の作戦は全て、組合の作戦参謀が一人で考えたものである。


「さて、この場合の対応は......」


Please Do NOTHING.(何もしないで下さい)


全ての作戦計画に、同じ言葉が書き記されていた。


***

________



泉と中島は、ヨコハマの港まで逃げていた。港には倉庫が幾つも並んでいて、姿を隠すのには打って付けの場所である。意識を取り戻した中島の手を引いて、泉は組合の追っ手が来ていないか、倉庫の陰に身を潜めながら確認をしていた。


「くっ......」

「......!」


腹部を抑え、中島はガクッと膝から崩れ落ちる。
フィッツジェラルドに蹴られた箇所を見ると、白のシャツが血に染まっている。かなりの深手を負わされた中島の姿を見た泉は、彼に駆け寄り傷の手当てをと、手を伸ばした。


「大丈夫......根性骨(タフネス)が人虎の売りだ」


中島の異能力『月下獣』___白虎の姿に変わる能力だ。
だが完全に虎の姿になった場合、能力の制御(コントロール)が出来ないので、先程の様に身体の一部だけを虎に変えての使用が多い。

肉体強化、身体能力の向上だけでなく治癒能力を引き上げる事も可能だった。


「鏡花ちゃんこそ......随分捜したんだよ。今まで何処に?」


泉は彼の問いに対し、小さな声で答えた。


×××

望ム場所ニ居ル為ニ→←月華ハ刃ヲ隠シテイル



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設定タグ:太宰治 , 文豪ストレイドッグス , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時

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