8話 ページ10
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机に向かって何時間経っただろうか。復習の為に開いたノートにはびっしり文字が連なっていた。そろそろ両親が仕事から帰ってくるだろうと思い、下へと降りていった。
乾燥機にかけたスラックスは完璧に乾いており、温もりのある状態に仕上がっていた。一旦上に上がってスラックスをハンガーにかけ、もう一回下へと降りた。すると、タイミング良くお母さんが帰って来た。
「…おかえりなさい」
「ただいま、あの人は？」
「まだ帰ってきてない」
「あらそう、お母さんちょっと出掛けてくるからあの人には何も言わないで頂戴ね」
「うん、わかった気を付けて」
「行ってくるわ」
お母さんは、所謂不倫と言うやつをしている。毎日って訳では無いけれど残業ってことに偽って、不倫相手のところに行っているらしい。あの人とはお父さんのことで、Aに口止めして残業だって言わせているのだ。
家に帰って来たと思ったらすぐ居なくなってしまったお母さん、お母さんが居た玄関にはお母さんが持っていたであろう傘により出来た小さな水溜まりがあった。
Aは心做しか寂しく感じたので、その気持ちを紛らわす為また勉強しようと自室へと戻っていった。
「ただいま」
お父さん独特の低い声が階下から聞こえてきた。シャーペンを握り進めていた手を切りの良いところで止め、下へと降りる。
「おかえりなさい」
「ただいまA、あいつは？」
「さっき電話があって、今日も残業だってさ」
「そうか、煩くなくて済むな」
お母さんに言われた通りお父さんに偽りの残業を告げ、お父さんをお風呂場へと追いやる。スーツを受け取りハンガーにかけておく。
「腹減ったなー」
「お祖母ちゃんが昨日作り置きしてくれた夕食があるからそれ食べる？」
「おー食べる」
お風呂から上がったお父さんが、空腹を訴えて来たので置き手紙に書いてあった夕食を冷蔵庫から取り出し電子レンジへと入れる。唸るように響く電子レンジを他所に、昨日余ったご飯を茶碗に移し電子レンジが空くのを待つ。
「ごめんな、A」
ふと、テレビを見ながら告げたお父さん。
いつもの声とは違い優しさを含んだ、昔のお父さんの声をしていた。
「お父さん達さ、離婚することにしたんだ」
「…」
「だからA、お父さんかお母さんどっちに着いていくか決めといてくれないか」
テレビからAへと目線を移し告げる。
驚きを隠せずにいるA、電子レンジの愉快な音がリビングを包んだ。
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幸福林檎 - 心理描写もすごく上手くて、大好きな小説です！初めてとは思えない！応援してます(^ ^) (2018年8月21日 23時) (
レス) id: c84f1b316a (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 天岸悠樹さん» はい！お願いしますね！ (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
天岸悠樹(プロフ) - らそまるさん» やったあ！完成したら報告します！ (2018年7月30日 3時) (レス) id: 2eadb8d21d (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 放射性アイソトープさん» 態々ご指摘ありがとうございました。作者らそまるの勘違いにて起こしてしまった間違いです。本当に感謝しております。 (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 黒羽さん» ほんとうですか！？それはとても嬉しいですね、これからもお付き合い願います (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らそまる | 作成日時：2018年7月27日 22時
