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14話 ページ17

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ふと目が覚めた。
ふかふかのベッドの上に横たわっているA。
玄関にいたはずなのに、何故部屋にいるんだろう。
身体を起こして、周りを見回す。
やはり自室以外何物でもない。


「え?」


枕には氷枕が引いてあり、制服かパジャマへと替わっていた。一体誰がこんなことを…


「入るわよ」


ノックされた扉を開いたのはお母さんだった。
珍しい来客にAは目を見開いて驚く。


「調子はどう?」

「あ、えと大丈夫だよ」

「そ、ならよかったわ。Aったら玄関で倒れてるんだもの、吃驚したわ」

「これお母さんがやってくれたの?」

「ここまでAを運んだのはあの人よ」


Aに施されていた一連の処置の主は両親たちだった。両親が口喧嘩をしていた時、お母さんがふと玄関に目をやると倒れて意識を失っていたAを発見し、お父さんが自室まで運びお母さんが氷枕等を用意してくれたと言う。


Aのことを見詰めて話すお母さんは、まさに母親という愛情に満ち愛しい我が子を見るような優しい目をしていた。
昔良くAに向けてくれていた、優しくて温かいAの好きなあの目だった。


「本当に心配したのよ?」

「う…ん。もう大丈夫だから」

「そう?」

「うん、ありがとう」


涙ぐんでいるのをお母さんに悟られないよう、俯きながら話すA。
ちゃんとゆっくり休むのよ、と告げてお母さんはAの部屋から去っていった。


扉の閉まる音が聞こえた瞬間、Aの目からポロポロと溢れ落ちる涙。
今まで流してきた涙とは違う、嬉しさや懐かしさ、そして幸せだと感じる温かい涙であった。
心が痺れるような、掴まれたような気分で。でも満たされているような。そんな感じがした。




微かな出来事であろうとも、今のAにとってはとても大切なことで。
当たり前だと思っていたことも、今のAにとってはとても救いであった。
やっぱり、お母さんとお父さんは腐ってもお母さんとお父さんであってこの事実は一生変わらない。




とても大切で、大好きなかけがえのない存在なのだ。



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幸福林檎 - 心理描写もすごく上手くて、大好きな小説です!初めてとは思えない!応援してます(^ ^) (2018年8月21日 23時) (レス) id: c84f1b316a (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 天岸悠樹さん» はい!お願いしますね! (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
天岸悠樹(プロフ) - らそまるさん» やったあ!完成したら報告します! (2018年7月30日 3時) (レス) id: 2eadb8d21d (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 放射性アイソトープさん» 態々ご指摘ありがとうございました。作者らそまるの勘違いにて起こしてしまった間違いです。本当に感謝しております。 (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 黒羽さん» ほんとうですか!?それはとても嬉しいですね、これからもお付き合い願います (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らそまる | 作成日時:2018年7月27日 22時

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