銀魂 光翼鳥の剣 黄金に輝く月 上

第４２幕　消えた女性 ページ43

「ふぅ・・・少し買い過ぎたかしら・・・・」

買い物帰りの妙は、そう言って軽い溜息をついた。

その手には、中身がいっぱいに詰まったスーパーの袋がある。

野菜、魚、肉、卵・・・・・・その他諸々、今夜の夕食の材料が中心だ。

妙は楽しそうに今夜のメニューを考えながら、帰り道を歩く。

その様子は本当に可愛らしく、そんな彼女の手から暗黒物質が生まれるとはとても思えない。

因みに、今日のメニューは卵焼きと卵焼きと卵焼きだ。

全て同じように思えるが、例え焼き魚にしようとも結局同じものが出来るので結果は同じである。

・・・・・・今夜の新八に黙祷。

と、その道中。

妙は反対側の歩道に見慣れた人を発見する。

「あら、Aさん」

彼女はパッと顔を明るくして、その名を呟いた。

Aは誰かと話しているようだ。

見えるのは背中だけなので、どんな様子なのかはよく分からないが。

・・・・それにしても・・・・。

妙は軽く首を傾げた。

Aは妙に荷物を多く持っている。

どこかに旅行でも行くのだろうか。

とすれば、今話をしている相手と？

だが、妙は相手の男に見覚えがなかった。

黒髪でほっそりと背が高く、美青年と呼ぶのがぴったりの男だ。

同じく美形であるAと並ぶと、まるで絵画から抜け出してきたようにさえ見える。

足元に転がっている妙なギャル男は置いておくとして。

「まさか・・・恋人！？」

妙はさっと顔を青ざめさせると、横断歩道に向かって駆けた。

だが、そういう時に限って信号は赤になり、前方を走行する車が塞ぐ。

「あー・・・・もう！！」

妙はそわそわとしながら、向こうの歩道を見やる。

すると、車の合間合間から、二人の姿が見えた。

何か深刻そうな話をしているようだ。

Aの表情がチラリと見える。

男を睨み付けているようだが、どこか悲しげだ。

すると、男が手を伸ばしてAの目元を拭う。

「・・・・・・？」

妙にはどんな状況なのかよく分からなかった。

だが、あのAが泣くという事は、相当な事があったに違いない。

二人はまた暫く何か話していたが、やがてどこかに歩いて行ってしまった。

同時に、信号がパッと青になる。

妙は急いで走り出したが、信号を渡りきる頃には二人の姿はどこにもなかった。

「・・・・・・・Aさん・・・・・・・」

妙はきょろきょろと辺りを見回したが、当然彼女が見つかるはずもなかった。

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