銀魂 光翼鳥の剣 黄金に輝く月 上

第２３幕　正気と狂気 ページ24

「Aちゃん！！正気になるんだ！！」

「A！！」

佐々木の言葉が、皆を動かす切っ掛けとなった。

彼らは、口々にかぐや姫の名を叫びながら応戦する。

だが、かぐや姫はとっくに理性など失ったかのように暴れまわるだけだ。

「うあっ・・・！？Aさん・・・・！！」

「下がってろ、新八！！！」

かぐや姫の剣の腕は尋常ではない。

新八の持っていた刀は瞬く間に弾き飛ばされ、カラカラと地面を滑って行く。

そんなを庇うようにして銀時が前に躍り出た。

ガキン、とAの一閃を真っ向から受ける。

衝撃と共に広がる腕の痺れを感じながら、銀時は叫んだ。

「A！！目ェ覚ませ！！てめーは血なんかに負けるような女じゃねーだろ！！」

「・・・・・・・・？」

「A！！」

銀時の呼びかけに、かぐや姫の表情が僅かに曇る。

何かを訝しがるような困惑した表情。

桂は遠目ながらもそれに気づき、ハッとしたように言った。

「・・・！！まだ・・・まだ望みはあるぞ・・・・！！」

Aが何故唐突にこのようになってしまったかは分からない。

彼女が危険な存在だという事は、言われなくても見れば一目瞭然だった。

だが、今の彼らにそんな事は関係ない。

彼らはただ、あの心優しい『A』を取り戻す事に必死だった。

しかし、それにはまだ決定的な何かが足りなかった。

かぐや姫の攻撃は、止まる事を知らない。

まだ、何かが必要なのだ。

彼女を戻すきっかけになる、何かが。

そう、例えば・・・・・・・・・・・・・。

刹那。

バキンッと、不吉な音がしたと思えば、銀時の木刀が真っ二つに折られた。

木の破片が辺りに飛び散る。

そして銀時の方はバランスを崩し、地面に腰を打った。

「・・・・・・・っ・・・・！！」

「銀時！！」

桂が慌てて駆け出すが、どう見ても間に合わない。

かぐや姫は紅桜を逆手に持ち直すと、銀時に向かって振りかぶった。

「避けろ！！銀時！！！」

「Aァァァァァァァァ！！！」

誰もが諦めにも似た悲鳴をあげた瞬間。


「俺の声が聞こえねェのか、上条Aァァァァァァァァ！！！！」


一際大きな声が、辺りに響き渡った。

「・・・・・・・っ・・・・・・・・？」

同時に、かぐや姫の動きがピタリと止まる。

彼女はカタカタと手首を揺らしながら、声が聞こえてきた背後を振り返った。

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