銀魂 光翼鳥の剣１１ 灯滅せんとして

第３１話　天使の楽園 ページ31

突如訪れた危機。

長谷川は気合と根性だけで、銀時に言葉を伝える。

(どーすんだ、銀さん！！将軍に何かあれば、俺達は楽園から一気に地獄行きだぞ！！)

(今更四の五の言っても始まらねェ！！将軍が遊びたいって言ってんだからしゃーねェだろ！！)

(だからって・・！！あ！！)

(何だ、長谷川さん！？)

(一箇所だけ天使の楽園があるぞ！！将軍をAちゃんの所に連れてって話でもさせときゃ・・)

(バカヤロー！！んな事したら嫉妬心に狂ったバカ共の餌食だ！！

そもそもあのワンピースの天使の隣は俺の席なんだよ！！)

(バカはアンタだよ！！)

(とにかく、あのバカ共から将軍護れんのは俺達しかいねーんだ)

銀時はサッと羽織を脱ぎ、浮き輪を手にして魔の海域に乗り込んでいく。

もう何とか彼等をフォローして、将軍に楽しんで帰ってもらうしかない。

(長谷川さん、アンタは将軍に帽子と水中眼鏡かけさせとけ。

奴らにゃバレねー方がいいだろうから俺が話しつけてくる)

そうして、銀時はジャブジャブと水中を進んでいった。

本来なら神楽達に将軍の存在を伝えた方が楽なのだが、

それをしない方がいいと判断したのには理由がある。

この場にいる桂や高杉、そして誰よりAの存在だ。

桂達は攘夷志士だし、Aは率直に言えば命と引き換えに幕府に買われた身だ。

幕府に彼女の正体が割れた時、もし彼女が幕府の要請を断っていたら、首を斬られていただろう。

光翼鳥が他の者の手に渡るくらいなら、と。

その点、Aにとって幕府は最も従順すべきで、最も憎むべき存在だと言える。

彼女に限って、憎悪に身を焦がす事はないだろうが。

この事には誰もが気付いていたが、あえてそれに触れるような事はなかった。

とにかく、そんな関係であるAと将軍が

ここでお互いの正体に気が付くのは気まずい事この上ない。

これは、いつかの将軍警護の時に、真選組がAにした気遣いと同じだった。

徐々に『バカ共』に近づいていく銀時。

それに一番に気付いたのはAで、彼女は彼に向かって軽く手を振った。

銀時も優しげな笑みを浮かべて応答する。

「・・・・・・」

将軍・徳川茂々は、その様子を静かな目で見つめていた。

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