銀魂 光翼鳥の剣１１ 灯滅せんとして

第２２話　諦める事は出来ないから　（近藤サイド） ページ22

「ちょっと・・・何で怒ってるの、銀時」

「別に怒ってねェよ！！悔しいだけで！！」

「悔しいって・・何の話よ・・・・」

目の前で言い争いをするAちゃんと万事屋。

と言っても、万事屋が一方的にカリカリしてるだけなんだが。

・・・奴の気持ちは分からなくもない。

俺も、Aちゃんの水着姿に期待していなかったと言ったら嘘になるのだから。

ワンピースを着てきた彼女の姿は、別の意味で衝撃的だった。

いや、元々そんな下心が前提でAちゃんをプールに誘った訳では(多分)無いから、

そんなにガッカリする必要もないのだが・・・・。

それにしても、水着を着るのを拒むなんて、Aちゃんはプールが初めてなんだろうか。

そう言えば、最初に誘った時に微妙な反応をしていた気がする。

最悪、彼女はプールの存在さえ知らなかったのかもしれない。

という事は、Aちゃんは俺を気遣って無理して誘いを受けてくれたのだろうか。

そう思うと、少しだけ申し訳なくなってくる。

だが、同時に嬉しくもあった。

『Aちゃんが俺を気遣ってくれた』というその事実が、とても嬉しい。

我ながら単純だと思うが、所詮男なんて皆そんなもんだろう。

何だかんだ言って、万事屋もAちゃんと会えただけで十分すぎる位楽しそうなのだから。

グダグダと文句を言っていても、口元はどこか綻んでいる。

・・・そんな細かい所まで見抜けるようになってしまうとは、

俺と万事屋の付き合いも割と長くなったという事か。

それでも、奴とAちゃんとの付き合いには負けるのだろうが。

・・二人がどんな言葉を掛け合い、どんな風に関わって生きてきたのか俺はほとんど知らない。

俺とトシや総悟達との今迄を、Aちゃんが細かく知らないように。

時々、万事屋と話しているAちゃんがとても遠い存在に感じられる事がある。

何も言わなくても、お互いの事がよく分かってるようなあの姿を目にする度に、

「何だかんだ言って、お似合いだよな・・・」

と思う。

と言っても、それは何も万事屋に限った事ではない。

付き合いが浅めな方の総悟と喋っている時も、ザキと遊んでいる時も・・。

トシと背中合わせで戦っている時も。

Aちゃんには、俺なんかには手の届かないくらいに相応しい男がいる。

そう思えてくる。

それでも・・・・。

「なァ、Aちゃん」

俺はAちゃんに声をかけた。


諦める事は、出来ないから。

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