第一章 赤く染まる季節 ページ2
たらり、とショートヘアの髪から汗が流れ、シャツにじわりと滲んだ夏はもうすっかりと消え去って、冬の寒さが近づいて、木々が赤く染まる季節が来た。
「寒っ…もーあかんわ…」
ぶるっと身震いをしながら、手にある暖かいミルクティーを口に含む。
じんわりと喉に甘さが残り、お腹が温まる。
これからの季節、駅のホームは寒くて嫌になる。
コートの中にあるスマートフォンをなんとなく取り出し、LINEを開いてみる。
昨日の会話を見て、思い出し笑いをしながら、朝の挨拶を送る。
すると、ようやく電車が来た。わたし達はすっかり見慣れた京阪の緑色の電車。
ミルクティーを飲み干し、ゴミ箱に捨てて電車に飛び込む。
中の暖房も、温いのか、わたしが冷えているのか、あまり暖かいと感じない微妙な温度。
電車に揺られながら、まだ慣れないローファーの硬さを実感しつつ、昨日の授業の内容をふと考え、テストも近づいていることを思い出した。
数学と英語はわたしの敵なので、友達に頼らないとなぁと、かっこ悪いことを考えていると、二駅くらい過ぎていた。
駅名を聞いて、降りなくてはならない駅だと確信し、慌てて降りる。
途中、誰かにリュックサックがぶつかったけど、そんなことは良くあるから気にしない。
そのままコートから定期を出しつつ、階段を降りて改札を目指す。
サラリーマンやOL、中・高生の波に飲まれない様に改札を抜け、友達と出会う。
「おはよー!」
「おはよー。なぁなぁ、髪の毛ぐしゃぐしゃやで?」
「え、嘘!」
笑いながら「ここ、ここ」といって教えてくれるけど、イマイチわからないでいると、奈央の手がわたしの頭をそっと撫でる。
「はい、治ったで!」
「ありがとー」
奈央のさらりとした長い髪を後ろの方できゅっ結んだ髪はわたしの憧れ。
昔から奈央のはそうだった。染めたみたいに茶色い髪も、外国人みたいに白い肌も、女の子の憧れみたいな子。
「長月さん」
「何ですか、水無月さん」
「憧れるわぁ…」
「それ、口癖なん??」
そんなことを言って笑ってみたりするのがわたし達の仲。
かれこれ結局長い付き合い。
「あ、まゆ!」
「ん?何?」
だから、知らなくていいことも知ってたり。
「霜月祐樹やで」
眠たそうに欠伸をして、友達とダラダラと歩く姿。
前髪の分け目は今日は右。
いつも前髪は寝癖でコロコロ変わってて可愛い。
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作者名:ラスカル | 作成日時:2015年10月23日 18時