99話 ページ3
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「今までお主がした行動を私が一つ一つ云ってやろうか……」
Aは黙って俯く
太宰はそろそろ駄目だと考え、もうそろそろAを退出させようとした
Aの体を支え、立たせようとした太宰に紅葉は声を掛けた
「逃すな」
流石は現役マフィア
Aは既に弱々しい表情を見せている
紅葉の殺気と、話を聞いたからだろう
紅葉は彼女の強みであり弱点を刺した
今まで、それと少しの気遣いのおかげで探偵社の役に立てていたのにと考えていた彼女の精神をズタボロにするには充分だった
充分すぎるくらいだった
紅葉と関わらせると不味いと感じた太宰はAを逃そうとするが、彼女は俯いて、顔を押さえて動かない
「……私は、こちら側に来るべきではなかった……?いや、でもあの行動は、結果的に良い結果を生んだもので……」
「Aちゃん、落ち着いて、彼女はマフィアに君を誘っているだけだ。君は探偵社にとって……」
「太宰は黙っておれ」
Aは太宰の声も届かないくらいの衝撃だったのだ
自分を光の世界に引き留めていた物を否定されたから
「お主の結果は、その場の判断で一番被害の少ない作戦ができていた。だが、それでもって一番非道な作戦じゃった。最近は囮は自分が担当できる様にしておるし、傷付く役は引き受ける様にする、そして被害は最低限で済ませる様にする。だがそれは全て味方への配慮。敵となる人物の数人はお主に捕まった時、大層怯えていた様じゃったな。“怖い、殺される、あの女は天使の皮を被った悪魔だ”とな。取引を持ちかけ、そこに盛大な罠を仕掛ける。お主の得意分野じゃ。言葉を巧に操り、自分の損害は無しで相手が罠に落ちる。それは____本当に正義がする事なのかえ?私にはそちらの世界の事がよく判らん。教えてはくれぬか?」
紅葉はAに言葉を刃物にして投げつけた
それはAの体をズサズサと刺さり、致命傷を与えた
もう太宰の声は彼女には聞こえない
先程から太宰がずっと声を掛けているが、紅葉の声だけが耳に残っていた
そんなAの様子を見て、紅葉が最後に畳み掛ける
「お主が憧れ夢に見た正義はそこの探偵社にはあった。でも、それにお主はなれていない。それはお主も判っておる。それはな____ここ数ヶ月、お主は合同での仕事を任されていないからじゃ」
太宰は紅葉を睨みつけた
だが、紅葉は何も気にしていない様だ
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