107話 ページ11
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「俺が隠してるって?何を?」
「君さ____今Aが何処にいるのか、知らない?」
中也は判りやすく顔を顰める
その様子に乱歩は更に言葉を重ねた
「何の事云ってるかさっぱりだな。俺はさっさと帰らせて____」
「Aが今探偵社に居ない。攻勢のところにも守勢のところにも。Aも莫迦じゃないからこんな事態に無断で母の用事を済ませるだなんてしない」
「へえ」
中也はとてもどうでも良さそうにしているが乱歩はまだ何かを云うみたいだ
「君は、いや、君達の首領はAが今何をしているかも全て明確に判ってるんじゃない?いや、もっと云えば……今、彼女はマフィアに協力をしたんじゃない?」
その言葉に賢治と与謝野が顔色を変えた
探偵社の仕事に熱心で、探偵社の事を大切に思っているAがマフィアに行っただなんて考えたくなかったから
「素敵帽子君、それを云うまで帰せないな」
「……なら、それを知ってどうする」
「取り返す」
「彼奴が自分でこちらを選んだとしてもか?」
与謝野達の頭には洗脳された可能性があることを信じていた
だが、その希望すら消えた
「最終的に説得したのは今手前等に捕まってる姐さんだ。俺はよく知らねえけど、彼奴は“私がしたいこと、するべきことを探すために来た”って云ってたぜ?矢っ張り探偵社じゃ不満だったんじゃ無えのか?彼奴はマフィア向きの人間だ。手前等に扱える品物じゃねえよ」
中也はそのまま帰ろうとする
与謝野も賢治も動かなかった
「……俺は今彼奴が何をしてんのか知らねえ。ただ彼奴がマフィアに来たことだけだ。理由も知らねえし姐さんと話して何を思ったのかも、今何をしてんのかも全部知らねえ。俺には彼奴が考えてることも全部知らねえ。悔しいことにな。残念だが、俺から引き出せる情報はもうねえよ。俺は帰る」
中也はそのまま帰って行った
与謝野は額を抑える
彼女が、紅葉と話すことを許可したからだ
だからAは結果的に堕ちてマフィアを選んだ
「あの時、止めれば」
「与謝野さん、今君が何を考えていてもAは戻らない。悪い人間はこの場には誰も居ない。僕達は未来を見れる訳じゃないんだ。責任を感じる必要はない。それよりも次のことを考えないといけない。賢治と一緒に戻って来て」
「……判ってるよ」
乱歩は太宰に連絡を送った
「Aに気をつけろ」と
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