21話 涙 ページ22
「金盞さん、本日はありがとうございました。来月また来ます。お邪魔しました。」
「ほんと、いつもありがとうございます。」
「いえ、では。」
「お、お邪魔しました。」
ピシャ
「……もうすっかり日が暮れたな。」
戸を閉める音がしたすぐ後に土井先生が呟く。
「…ですね。」
「帰るか。」
「…帰りますか。」
土井先生のすぐ後ろを歩く。土井先生は忍者なのもあって癖なのか足音を立てず少し早く歩いている。
行きも追いつくのが大変だったのに今は疲れや頭の中の混雑具合もあって足が遅くすぐ距離が広がってしまう。
すると土井先生が立ち止まりチラッと顔は横を向き目線はこっちに向ける。
私が追いつくとすぐにまた足を進めた。今度は少しゆっくりめで私のスピードに合わせるように。
学園につき入門票にサインして門の中を潜ると丁度夕陽で紅くなった雲が流れ顔を上げるといつの間にか空には青さが出てきていた。
青が徐々に侵略していきやがて紫色も出てきた。
「あ……。」
「紫苑の花みたいだ……。」
「え……。」
隣を見ると私と同じように顔を上げ空を見ている土井先生がいた。
「空の色。紫苑の花みたいだ………ぁ…。」
土井先生の頬に一瞬何かが流れた気がした。
「……ぁ(泣いてる…。)」
土井先生が泣いてる。そう脳が認識した瞬間に口が動いた。
「わ、私。そろそろ長屋に戻ります。」
そう言って部屋に戻る。私なりの気遣いのつもりだ。正しかったかどうかは分からない。だがなんて声をかけたらいいのか分からない私があの場にいても土井先生を傷つけるだけな気がした。
「……けど…。(思い出して泣いてしまうぐらい土井先生の心の傷はでかいってことか……っていうか多分この学園の人殆ど全員そうなのかも。)」
私はどうすればいいの……。
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あい(プロフ) - これ面白いです!! 夢主ちゃん可愛い♡ 続き待ってます (2022年4月12日 8時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飴松 | 作成日時:2022年2月14日 0時