全部、ふじがやくん！(2)

episode7 『#1Girl 19』 ページ8

初めてのお給料5万円のうち、私は3万円を死守して、両親にご馳走することに決めた。



日頃の感謝を込めてご馳走したいと言った私に、「それ、絶対藤ヶ谷さんが助言してくれたんでしょ？」って、お母さんは全てお見通しだった。

　

「藤ヶ谷くんも呼んだらどうだ」



「え？」



「お世話になってるのは、私たちじゃなくて藤ヶ谷くんだろう」



「呼んでいいの？」



「もちろん。日頃の感謝も伝えたいし」



「それって両親との顔合わせってやつ？」




お父さんの提案に、私は浮き立つ気持ちを押さえきれない。




きたきたきたー。







結婚に向けて、一歩前進したかもしれない。






・


　





・


『一緒に食事？』



「はい！父が、藤ヶ谷さんに日頃のお礼を言いたいからって」



『お礼を言われることなんて何にもしてないけど、呼んでくださってるのなら、お邪魔するよ』



電話口から、電車のアナウンスが聞こえる。



「今、駅ですか？」



『そう、出張の帰り』



「お疲れ様です」



『相澤さんも、お疲れ様』




出会った頃から思っていたことだけど、藤ヶ谷さんの声は聞き心地がよくて、私は彼の声を聞くたびに、うっとりとしてしまう。




「あー、藤ヶ谷さんの声はいい声だなぁ」



『そうかな』



「はい！ずっと聞いていたいくらいに」



『俺、電車に乗るときは電話で話さない主義なんだけど、電車が到着したら切ってもいいかな』



「ただの願望ですよ！電車が来たら切ってください」



『そうするね』





電話口で、藤ヶ谷さんが笑っている。



藤ヶ谷さんは真顔で冗談を言って、私を困らせるのが好きなのだ。



意外とおちゃめな人なんだっていうことに、最近気づいた。




「じゃあ、週末、よろしくお願いします」



『楽しみにしてる』




電話を切って、ベッドに思いっきりダイブする。



週末になったら、藤ヶ谷さんに会える。




嬉しくて、しばらくベッドの上でジタバタと幸福を噛み締めた。

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