61 ページ12
お姉ちゃんが自宅に戻るついでに、私も東京まで連行された。
"今日はうちに泊まればいいでしょ?"ってものすごい圧をかけられた私は、合鍵を握り締めて、今、玉森さんのマンションの前に立っている。
何度も何度も、息を切らして、この建物まで走った。
玉森さんに逢いたくて、もうすぐ逢えるんだと思うと嬉しくて、頬が緩むのを隠しながら、玉森さんの元へ走った。
つい最近のことなのに、何だか遠い昔のことのように思える。
インターホンを押そうとする指が震える。
迷惑そうな顔をされたらどうしよう。
『はい』
「・・・あの、Aです。合鍵を返すの忘れてました。ごめんなさい。えっと、だから返しに来たんですけど・・・あ、このままポストに入れましょうか?」
『落ち着けよ』
支離滅裂な話し方をする私に、玉森さんは呆れたようにそう言った。
『ちょっと待ってて?』
そう言ってインターホンを切った玉森さんが、数十秒後に玄関から顔を出した。
「悪い、風呂から上がったばっかで着替えてた」
「ごめんなさい。急に来ちゃって」
「別に構わないけど」
「あの・・・合鍵、返すの忘れてました。遅くなってごめんなさい」
私が差し出した手を、玉森さんはじっと見つめる。
「ん。わざわざどーも」
「・・・はい」
なかなか時間の合わない私と玉森さんを、この合鍵がつないでくれた。
ほんの30分でも逢いたくて、今日は逢えるかな逢えないかなって、そんなこと思いながら、この合鍵を回した。
「じゃあ、さよなら」
玉森さんの顔を一度たりとも見れなかった。
見てしまったら、私の本心を見抜かれてしまうんじゃないかと思ったから。
「A!」
名前を呼ばれて、立ち止まる。
「・・・・何ですか?」
振り返れなくて、前を向いたまま返事をした。
「お前がいると、嬉しかったよ」
「・・・・え?」
「この鍵使って、お前が家で待っててくれた時、何か嬉しかった」
「玉森さ・・・
「じゃあ、気をつけて帰れよ」
パタンって、閉じられたドア。
寒さに凍えてしまいそうな冬の夜。
私と玉森さんを繋ぐものは、全部なくなってしまった。
1383人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あい(プロフ) - 初めまして。ずっとこのお話を読んでみたいと思っていて今日ふらっと覗かせて頂いたらパスが外れており一気に読みました!!いじわるしちゃう玉森くん最高です。とても素敵なお話で丁寧な表現がとても好きです。号泣でした〜!他の作品も楽しみです♡ (7月10日 0時) (レス) id: 64e43c6de7 (このIDを非表示/違反報告)
あみすけ(プロフ) - はじめまして。最近マキさんのお話を見つけて毎日読ませてもらっています!パスワード付きのお話もぜひ読ませていただきたいのですが、パスワード教えて頂くことってできますか?(>_<)マキさんのお話大好きです!(^^) (7月8日 7時) (レス) id: 66e1809fca (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ricoさん» はじめまして。コメントありがとうございます!玉森担の方からそう言っていただけると、すごく嬉しいしほっとします(>_<)私の書いたものを好きになっていただけたこと、本当に嬉しいです(*^-^*)今まで読んでいただき、ありがとうございました! (2019年12月18日 1時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
rico(プロフ) - はじめまして。全部玉森くん!からマキさんのお話読ませて頂いてます。玉森担です。めちゃくちゃ玉森くん過ぎて、ずっとキュンキュンしてます !マキさんの作品のファンであることお伝えしたくてコメントさせて頂きました! (2019年12月16日 21時) (レス) id: ad6e94e6af (このIDを非表示/違反報告)
たいやき(プロフ) - めっちゃ分かります〜!いろんな人にキスマイちゃんをみてほしいです(*^_^*)最近、キスマイちゃんのラジオやCMが盛りだくさんでファンとして幸せです(^o^)私、「Mr.FRESH」も大好きではやくMVをフルでみたいです♪♪ (2019年11月9日 7時) (レス) id: 2edd79c1bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ