綿菓子と香辛料 2

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「真ー野さんっっ」



親しい友達を見つけた時のように、彼女は手を振って、私の元に駆け寄った。



「やっと会えた。昨日も待ってたのに、真野さん全然来ないんだもん」




「・・・・昨日は、授業なかったから」




「そうなんだ。でもよかった。今日は会えて」




ニコニコと微笑む彼女が身を包む、玉森さんの学校の制服。




直視できなくて、私は下を向いた。





「どうするか、決めました？」





うつ向く私を挑発するように、彼女は私の顔を覗き込む。





「真野さん？早く答えて？」




「・・・別れます」




「よかった。ちゃんと話のわかる人で」




「別れるから、変なことしないでください」




「え？」




「玉森さんに、迷惑かけないでください」




「迷惑かけたのはあんたでしょ？調子に乗って職場に押し掛けるようなことして」




視界がどんどん歪んでいくけど、私は、この人の前で絶対に泣きたくなかった。




「いつ別れるの？」




「・・・・今日、玉森さんに伝えに行きます」




「偉いね、真野さん。そんなに玉森先生のことが好きなんだ」






好きなんかじゃない。





私は、玉森さんのことを愛してる。





目の前の女子高生には到底わかるはずもない強い気持ちで、私は、玉森さんを愛してる。





「こんなことしなくても、好きな人に好きになってもらえるといいね」




「は？」




「可哀想だよ、あなた」





私は知ってる。




誰かを大事に想う気持ちも、大事に想われる幸福感も。





全部全部、玉森さんが教えてくれた。






「さようなら」





名前も知らない女子高生に背中を向けた。





私は玉森さんの幸せを、誰にも壊して欲しくない。




だから私も、壊さない。






もう二度と、玉森さんの温かい胸の中で、眠ることができなくても。

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