72 (玉森くん) ページ23
日々は、生徒の進路決定に向けて忙殺された。
何も考えることなく時間に追いまくられる毎日は、Aがいなくなった俺にとってはありがたかったかもしれない。
淡々とした日常は流れるように過ぎて、明日はついに卒業式を迎える。
「玉森先生」
職員玄関で靴に履き替えていると、三上先生と鉢合わせた。
「はい」
「今から帰るんですか?」
「まぁ・・」
「一緒にご飯食べませんか?」
「え?」
「随分前に誘った時は断られちゃったけど、今は大丈夫ですよね?」
「大丈夫?」
「だって、Aちゃんとは別れたんでしょ?」
傷口をえぐられたことを不快に思いながら、ハッとする。
「何で知ってるんですか?」
「・・・え?」
「俺がAと別れたこと、誰に聞いたんですか?」
ずっと不思議だった。
Aに何かをけしかけたのはきっと矢谷なんだけど、どうやって矢谷がAまで辿り着けたのか、それがずっとわからなかった。
「矢谷を使って、Aに何をしたんですか?」
怒りで声が上擦りそうになるのを、必死に抑えた。
「・・・何のことですか?言いがかりはやめて」
血の気の引いた顔をして、三上先生は足早に職員玄関を出て行った。
「・・・やっぱ原因、俺だったんだ」
怒りに、心が支配されそうになる。
俺に向けられた好意は、それが報われないとわかると、悪意に変わる。
俺だけに向けられた悪意なら、いくらでもはねのけられるし、別にそんなこと気にしない。
「・・・A」
俺に向けられるはずだった黒い気持ちを、Aは黙って受け入れたんだ。
そしてそれはきっと、全部、俺のためなんだ。
「バカじゃねーの?」
悔しくて、情けなくて、声がかすれる。
Aの小さな身体で、まだ大人になりきれない未完成な心で、身勝手過ぎる悪意を受け止めるのは、どんなに辛かっただろう。
今すぐ抱きしめたい。
大丈夫だよって、俺がいるからって、ありったけの安心材料をAに与えてあげたい。
開けっ放しのガラス窓から冷たい風が流れてきて、少しだけ冷静になる。
今度こそ俺は、絶対に間違えない。
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あい(プロフ) - 初めまして。ずっとこのお話を読んでみたいと思っていて今日ふらっと覗かせて頂いたらパスが外れており一気に読みました!!いじわるしちゃう玉森くん最高です。とても素敵なお話で丁寧な表現がとても好きです。号泣でした〜!他の作品も楽しみです♡ (7月10日 0時) (レス) id: 64e43c6de7 (このIDを非表示/違反報告)
あみすけ(プロフ) - はじめまして。最近マキさんのお話を見つけて毎日読ませてもらっています!パスワード付きのお話もぜひ読ませていただきたいのですが、パスワード教えて頂くことってできますか?(>_<)マキさんのお話大好きです!(^^) (7月8日 7時) (レス) id: 66e1809fca (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ricoさん» はじめまして。コメントありがとうございます!玉森担の方からそう言っていただけると、すごく嬉しいしほっとします(>_<)私の書いたものを好きになっていただけたこと、本当に嬉しいです(*^-^*)今まで読んでいただき、ありがとうございました! (2019年12月18日 1時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
rico(プロフ) - はじめまして。全部玉森くん!からマキさんのお話読ませて頂いてます。玉森担です。めちゃくちゃ玉森くん過ぎて、ずっとキュンキュンしてます !マキさんの作品のファンであることお伝えしたくてコメントさせて頂きました! (2019年12月16日 21時) (レス) id: ad6e94e6af (このIDを非表示/違反報告)
たいやき(プロフ) - めっちゃ分かります〜!いろんな人にキスマイちゃんをみてほしいです(*^_^*)最近、キスマイちゃんのラジオやCMが盛りだくさんでファンとして幸せです(^o^)私、「Mr.FRESH」も大好きではやくMVをフルでみたいです♪♪ (2019年11月9日 7時) (レス) id: 2edd79c1bf (このIDを非表示/違反報告)
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