綿菓子と香辛料 2

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「あ、あの時の猫だ」




「猫？」





「玉森さんがにらめっこしてた猫ですよ！覚えてないですか？ちょうどこの街灯の下で威嚇してたじゃないですか。この人何やってるんだろうって思・・・




思わずはしゃいだ声を出してしまって、慌てて口をつぐんだ。




お姉ちゃんのマンションまであと少し。



玉森さんは私を家まで送り届けてくれてるだけなんだから。





「あの、ここで大丈夫です。ありがとうございました」




「真野に引き渡してから帰る。あとで文句言われたくないから」




「文句なんて言われないですよ」




「絶対言う。あいつの性格ひんまがってるからな」




「・・・言いますね。すみません！重ね重ね」




「いいから早く部屋に入れよ。俺の終電もなくなる！」




「はい！」





急いでインターホンを押しても、お姉ちゃんも宮田さんも、一向にドアを開けてくれなかった。




「・・・・もしかして、留守なのかな」





「はぁ？こんな時間にどこ行ってんだよ」




「もう寝ちゃったのかも」




「合鍵持ってんだろ？」




「・・・実家に置いてきちゃいました」





「バーカ！」




「ごめんなさい」




「インターホン連打しろよ」




「はい！」




言われた通り、何度もインターホンを押したけど、やっぱり二人がドアを開けてくれる気配はない。




「あの、どうにかしますから、玉森さんは帰ってください」





「どうにかって？」




「もう起きてくれないみたいだし、そのへんの漫画喫茶にでも・・・




「お前一人で？」




「はい」




「行かせられるわけないだろ！」




「大丈夫ですよ。店員さんもいるんだし」




「ダメだ。俺んちに来い」




「え？」




「漫画喫茶よりましだろ。行くぞ」




「行けませんよ！」




「何もしねーよ」




「そういう問題じゃない」





頑なに拒む私の腕を、玉森さんは強引に掴んだ。




「お前の為じゃない。俺の為に言ってんだよ」




「え？」




「一晩中心配するの、嫌だから」







私はそれ以上何も言えなくなって、玉森さんに手を引かれたまま、お姉ちゃんのマンションを後にした。






私を心配してくれることが申し訳ないのに、少し嬉しくて、そんな自分を浅ましいと思う。

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