綿菓子と香辛料 2

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「ほら、早く名前言って！自己紹介！」



同じ学部の沙絵ちゃんは、そう言って私を肘でつつく。




「沙絵ちゃん、どういうこと？」




目の前に並んでいる男の子達にびくつきながら、私は沙絵ちゃんにそう尋ねた。




「見てわかるでしょ！」




「沙絵ちゃんとご飯食べるんだと思ってた」




「食べるわよ？目の前に料理あるじゃない」





数分前、沙絵ちゃんに誘われて入った居酒屋には、同じ学部の友達数人と、見知らぬ男の子たちがすでに着席して私たちを待っていた。





「合コンじゃん！」




「お食事会だよ？」




キョトン顔でとぼける沙絵ちゃんに、私は開いた口が塞がらない。




「困るよ！」




「何で？あのイケメン先生とは別れたんでしょ？」




「そうだけど・・・




「出逢いの場を提供してあげてるんじゃない。感謝してよね！」





「・・あの〜」





私と沙絵ちゃんの小競り合いを見ながら、男の子たちは困惑している。




「あ、ごめんなさい！この子は真野Aです。特筆するようなことは何にもない子ですけど、性格はいいですから」





沙絵ちゃんはテキトーに私を紹介して、その後は熱心に自分の"特筆するようなこと"を長々と語っていた。





新しい出逢いなんて必要ないし、玉森さん以外の人を好きになる自分を、全然想像できない。





「真野さんは、一人暮らし？」




目の前の男の子が身を乗り出してそう言った。




「いえ、実家です」




「どこ？」




「遠いんです。2時間かかるから」




「2時間？！今日はどうするの？終電までに帰るの？」




「沙絵ちゃんのおうちに泊まらせてもらいます」





「俺も一人暮らしだよ？泊まる？」




「え？」




「そんな顔しなくても。もしかして引いてる？冗談だよ」





愛想笑いを、上手に浮かべられたかわからない。



どうしてこんなに、悲しい気持ちになるんだろう。



玉森さんにいくら理不尽なことを言われても、少しも傷つかなかったのに。




「沙絵ちゃん、お手洗いに行ってくるね」




小声で沙絵ちゃんにそう言って、何とかその場を離れた。




どうしてだろう。





涙を我慢することができなかった。

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