58(高1・秋) ページ10
鈴木さんと受付けを代わって、私はお弁当を食べるために倉庫の扉を開く。
その瞬間、薄暗い倉庫に光が差して、椅子をくっつけて横になっている玉森先輩を、スポットライトみたいに照らした。
「・・・・いた」
何の仮装もしていない、いつもの制服姿の先輩は、照らされた光に顔をしかめて、ゆっくりと起き上がる。
「・・何だよ、眩しいだろ」
「あ、すみません」
慌てて扉を閉めると、倉庫は再び薄暗さを取り戻した。
「・・先輩、欠席なのかと思ってました」
「担任に休むなって言われてんだよ。出席日数ギリギリだから」
「そうなんだ」
数回会話を交わして、そこからは無言。
余計なおしゃべりを、玉森先輩は嫌うから。
「いいもん持ってんじゃん。それちょーだい」
「え?」
いつの間にか、私の前に移動してきていた先輩は、私が鈴木さんからもらったクッキーを指差してそう言った。
「あの、これは・・・その・・・
「朝から何も食ってねーんだよ」
あげると言っていないのに、玉森先輩は勝手に袋を開けて、ハートの形のクッキーを口の中に放った。
「・・・・ジンクス」
「あ?」
「いえ、何でもないです」
先輩はジンクスを知らないらしく、パクパクとクッキーを食べて、「けっこううまいな」って満足そうにうなずく。
鈴木さんは、”好きな人と一緒に食べたら”と言っていた。
ジンクスを試すことすら、私には難しい。
「私、そろそろ行きますね」
お弁当を片付けて、備品の椅子を元に戻す。
「水上!」
「え?」
名前を呼ばれて振り返った私の口に、甘い香りが広がった。
「最後の一枚。お前にもあげる」
呆然とする私を見て、玉森先輩は笑う。
「どうなるんだろうな」
「・・・え?」
「ジンクス、試しちゃったから」
べーって舌を出して、玉森先輩は倉庫を出ていく。
私をからかって楽しんでる先輩が許せないのに、こんなにもドキドキしている私は、結局、玉森先輩のことが好きなんだ。
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mhnon39(プロフ) - そうだったんですね!分かりました!何度もお話読んでます^^他のお話が読めるまでお返事お待ちしております!頑張ってください^^ (2020年6月10日 20時) (レス) id: f1d97944f4 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - 海さん» 悲しい展開が続いていますが、最後までお付き合いくだされば嬉しいです(*^^*)メッセージありがとうございます。1日に数件しか返信できておらず、パスワードをお送りするのは遅くなると思います(><)申し訳ありませんm(._.)m (2020年6月10日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - とっっても切なくて胸が苦しいです!マキさんの書く作品本当に面白くてだいすきです^^メッセージの方も送らせていただいております^^これからも更新楽しみにしています。 (2020年6月9日 20時) (レス) id: f1d97944f4 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - 玲さん» 新堂さんヤバいですよね!女子の嫌なところをグツグツ煮詰めて出来上がったような仕上がり笑!3人を可哀想にしたててるのは私なんですが、可哀想( ;∀;)って思いながらかいてます。結末が見えなくてある意味泣けてきます笑! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - なんか、、新堂さん以外の3人が3人共良い子ですね。そのおかげでなのか新堂さんの悪役さが際立っていてなんとも良いです。現実に居たらぶっ飛ばしてるかもしれませんが(笑)3人は3様の切なさがありますね。誰も悪くない。悪くないから苦しい。こういう展開大好き! (2020年6月4日 20時) (レス) id: b7c4bcac2b (このIDを非表示/違反報告)
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