三つ編みをほどかれた日(桃色編)・《2》

56・藤ヶ谷さん ページ8

疲れ果てたように、俺の隣でAが眠っている。




ソファに押し倒して、長い長いキスをした。




キスのその先に進んでしまおうかと一瞬考えたけど、不安げに俺を見上げるAのあまりの頼りなさに、理性はどうにか保ってくれた。




その代わりというか、よからぬことを考えてしまったことを打ち消すために、思いっきり彼女の身体をくすぐった。




身をよじって笑うAが可愛くて、もっと笑って欲しくてくすぐり続けていたら、しつこいって怒られて、彼女はそのまま寝てしまった。





何の根拠があって、こんなに安心しきった顔して眠ってんだよ。



無防備な寝顔に、何だか泣きそうになってしまう。





玉森の存在は、時々頭の中をかすめて、俺を自己嫌悪に陥れる。





Aを好きになればなるほど、彼女の気持ちも全て、俺が独占していたいから。





閉じていたAの目蓋が、ゆっくりと開く。




「起きた？」





「・・・・ん？」





「寝ぼけてんの？まだ寝る？」





「・・・うん」





「A・・・・抱きしめてもいいかな」





「・・・いいよ」






Aの身体に腕を回すと、彼女も俺にしがみつくように抱きついた。





「・・・お前、俺のこと誰だと思ってんの？」






思わず口にした言葉に、自分でも驚いていた。





人を好きになると、弱い自分に気づいてしまう瞬間がある。




いつまでも、玉森と自分を比べてしまう自分に嫌気がさす。





「呑気に寝てんなよ。俺の気持ちも知らないで」




だけどやっぱり抱きしめてしまう。





俺には君が、愛しくてたまらないんだ。

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